パターン化すれば自動化できる

私がやっていたように会話のすべてを書き起こすのは大変なので、先生からもらった名刺に、「この先生はネコが好き」「この先生はゴルフに毎週行っている」などと、メモしておくだけでも十分だと思います。

先生と話をしたら、その内容をメモして、そのメモから雑談ネタを拾っておくという行為をパターン化すると、無理なく雑談のネタをピックアップできるはずです。

一度、「この仕事にはこのスタイルを当てはめよう」というパターンを確立すれば、その場で臨機応変に状況を判断しなくても、ある程度は、“自動化”できるので、「このパターンはどうしたらいいんだろう?」と焦ることもなければ、変な行動を取って大きなミスをおかすリスクを大幅に減らすことができます。

「空気が読めないと営業はできない」はウソ

次のポイントは、「相手の機嫌を見計らう」という点です。

その場の空気を読むのが苦手な人が多いASDからすると、「機嫌を見計らう」のは非常に難しい作業です。私自身もそうですが、特にASD気質の強いこだわりさんは、「空気を読んで相手の表情をうかがうのが苦手」な人が多いです。これについては、どんなに頑張って発達障害でない人のように「空気を読もう」と思っても、なかなかうまくいきません。

銀河『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』(扶桑社)
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私の場合は、空気が読めないことが原因で、上司や先輩にいつも責められていました。しかし、その責められる原因は「空気が読めない」こと自体ではなく「空気が読めないと営業はできない」という固定観念が原因だったと思っています。

営業に限らず、ビジネスをする上でコミュニケーションは必要なので、相手の気持ちを読み取る必要はあります。ただ、「空気を読む」というのは、相手の気持ちをくみ取るスキルのひとつの手段でしかありません。それ以外にも相手の意図を読む方法はあるので、本来は「空気を読む」ことだけが正解ではないのです。

もちろん、空気を読めたほうが楽だし、正直、私もそのスキルはうらやましいです。でも、それができない以上は、別の方法で攻略するしかありません。飛び道具が使えなかったとしても勝負を諦める必要はなく、格闘技を極めて、自分のフィールドに持ち込んで戦えばよいのです。

逆に考えれば、「空気を読む」以外にコミュニケーションを円滑にする手段を探して、パターンとして習得してしまえば、こだわりさんが直面している問題はだいぶ解決されます。