盛った「ネタ的な話」はスベっている可能性が高い

ここまでで、お伝えしたいことの本質を、だいぶお伝えすることができました。ただそうはいってもまだ、「自分の感情をそのまま伝えるとおもしろいなんて、信じられない」「やっぱり『ネタ』的なものを仕込む方がおもしろくなるんじゃない?」という人もいるかもしれません。

そういう人には、この言葉を覚えておいていただきたいと思います。

「事実は小説より奇なり」

普通の人は、「ネタ」をきれいにゼロイチから作ることはできません。もし作ったとしても、それはあなたが思うより、陳腐で浅い話に聞こえてしまっている可能性が高いと思ってください。そんな狙ったかのような「盛った話」は、実はスベっている可能性も高い。だから、そういう打算的なことは、今後一切考えなくてOKです。

自分の感情を事細かに説明することがポイント

その代わりに、自分がどういう感情を持ったのか、その詳細を丁寧に説明するようにしましょう。人の思考は常に流動的で、かなり大きなゆらぎがあります。しかも、多くの人は、自分の考えや感情をそれほど言語化していません。

だから、その思考や心理状態を詳細に語れば、その中に相手からすると新鮮な発見があり、「それ、どういうこと?」と興味を持つ部分が必ず出てくるのです。

度々登場しているA先生ですが、彼が今後、こんな風に変化していったら、あなたはどう思いますか?

・他の人が話を振っても、カップラーメンの話題には食いつかなくなり、スイーツへの興味ばかり熱っぽく語るようになった

・引き続き、毎日カップラーメンを食べているけど、なんだかマンネリ感があって悩んでいると退屈そうな顔をし始めた

・他の人がカップラーメンの話を振ったら、「ああ、昔、そんな話をしましたね〜」と、なぜか遠い目をして、とっくに終わった過去のことのように話し出した

自分の感情を語らない会話はもったいない

実際、人がこんな風に変化することは、ありがちです。そういう時には、その変化したありのままの自分を出す方が、結果として場も盛り上がります。

しかし、多くの人は、「こんな一面、相手に理解してもらえないかも」などと思い、自分のそれまでのキャラクターを守ろうと、そんな心理状態の変化を語らずに、なんとなく当たり障りのない感じで、話を合わせてしまったりするわけです。

そんな会話は、非常にもったいない! 相手が聞いておもしろい話は、あなたのストレートな感情、そしてそれが生じさせる化学反応的な発見です。だからこそ、自分の内面の感情を相手に伝えることが、おもしろい話をするための何よりの前提なのです。

渡辺 龍太(わたなべ・りゅうた)
放送作家、即興力養成講座講師

幼少期から口数が極端に少ない性格だったが、アメリカ留学時に受けたインプロ(即興力)がきっかけとなり、以降日本人向けの即興力研究に注力。帰国後、NHKのディレクターに就任。番組出演者への即興力アップの指導も開始。現在は大手芸能事務所「浅井企画」のプロ芸人向けのアドリブ講座や公開講座でインプロ講師としても活躍中。