コロナ感染対策のためのマスクがかえって感染リスクを高める可能性がある。歯科医の照山裕子氏は「マスクをしていると息苦しくて、つい口呼吸になることがあり、ばい菌やウイルスが体内に入りやすくなる。またマスク下で口の周りの筋力が低下すると、感染症にかかりやすくなるだけでなく、誤飲・誤嚥の増加やほうれい線が深くなることにもつながる」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、照山裕子『歯科医が考案した新習慣!免疫力を高めてウイルスを遠ざける 7秒うがい』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

マスクをすると感染しやすくなる⁉

新型コロナウイルスによる感染症が拡大してから、多くの方がマスクをするようになりました。しかし、マスクだけではウイルスの感染を防ぐことはできません。

東京大学医科学研究所が発表したデータによれば、ウイルスを吸い込む側の人が布マスクを着用した場合、着用しなかったときに比べて吸い込む量が60〜80%に低下したとされています(※)

※(注)新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果

これは逆にいえば、マスクをしていても60〜80%くらいのウイルスは吸い込んでしまうということです。また、マスクをつねにすることによって、かえって感染症リスクが高まる可能性があります。

マスクをすることで「口呼吸」してしまう人が増えるからです。

みなさんも、マスクをしながら外を歩いていたりすると、息苦しくなって、ついつい口呼吸をしてしまっているのではないでしょうか。口で呼吸しているか、鼻で呼吸しているかは、感染症対策においては、マスクをするかしないか以上に大きな違いがあります。

たとえば福岡のある小学校では、生徒の口呼吸を鼻呼吸に変えるトレーニングをしただけで、インフルエンザにかかる子どもが40%から5%に激減したという調査結果があります。

鼻は「天然のマスク」

私たちはふだん、鼻で呼吸をしています。

鼻のなかにはたくさんの鼻毛が生えているほか、つねにネバネバした粘液(いわゆる鼻水)が出ています。

鼻毛や鼻水が、ばい菌やウイルスをからめとり、それ以上体のなかに侵入するのを防いでいるのです。また、鼻のなかは細かい血管が張りめぐらされていて、吸い込んだ空気をすぐに温め、加湿する効果もあります。

加湿されることにより、高温・高湿な状態が苦手なウイルスの増殖を防いでいるのです。これらの効果は絶大で、空気と一緒に入ってくるばい菌を70%ほどはカットしてくれます。

つまり、鼻呼吸は、「天然のマスク」の役割を果たしているということです。口で呼吸するのは、この「天然のマスク」を外してしまうのと同じ。ばい菌やウイルスが体内に入り放題になっているのです。

もちろん、だからといってマスクをしなくてもいいわけではありません。

マスクは自分や他人への飛沫感染を防ぐだけではなく、「接触感染を防ぐ」という役割も大きいです。じつは、私たちはふだん、自分が思っている以上に口や鼻、目などを指で触ってしまっています。それにより、指に付着していたばい菌やウイルスを自分で粘膜に運んでしまっているのです。マスクをしていれば、そうした接触感染を防ぐことができるというわけです。