災害支援で身に付いたスピード感

新型コロナ危機の支援では、医療用防護ガウンの製造現場の他、保全マンが出かけて行って、新しくラインを引いたり、設備を立ち上げる作業に従事した。

災害の場合は被災現場へ出かけて行って、工場設備の復旧だけでなく、電気設備の調整、壊れた洗濯機の修理、水道の補修なども行った。インフラが役に立たなければ生産の復旧どころか、人が生活することもできない。保全マンはいざと言うときにすぐ動ける体制が整ってきた。

古いバルブ
写真=iStock.com/FooTToo
※写真はイメージです

「危機があると、対策会議の後、朝倉本部長から、こういう支援を頼むという話が来るわけです。僕らが行く前に生調(生産調査部)の先遣隊が入っていて、彼らがどういう人材が欲しいかと言ってくる。我々はすぐに人材を決めて、翌朝には現地へ向かう。それくらいのスピード感が大事ですわ。もう一つは、『困ったときは助け合う』この精神を保全マンは忘れない。復旧するときは道具も満足にない。彼らはその場で工夫して手作りの道具も作る。

施設がこわけとる(壊れている)、かたいどる(傾いている)、精度出しをするとなると、やっぱり保全の力はすごいですね。

我々は水没している設備のモーターを外して、それを乾かして復旧させるとか、電気関係が壊れておったら、それも直してしまう。保全と動力課の今までの経験や知識、技能には頭が下がります」(斉藤)

動力課とは設備の動力関係を見るプラントエンジニアリングのチームである。

危機の時は担当の人間を待っていられない

本来、インフラや家電は現地のプロが直すべきだ。だが、災害となると、専門家は引っ張りだこになる。じっと待っていては、いつまで経っても復旧できないのである。そこで活躍するのがプラントエンジニアリングチームである。そして、「停電になってもラインを動かす」訓練までやっている。

これまた斉藤が力を入れて話す。

「日常でも、機械の電源が落ちた、なんてことは実際、あるんですよ。我々は電気設備の人間を呼ぶ間、待ってるなんてことはしていられない。彼らはすぐには来ないし、下手をすると数日かかることもある。

そうなると我々は『みんな集まれ』ですよ。とにかくみんなで何とかする。『さあ、やるぞ』と言って、どういう手があるが考えて、その間に補修部品の手配をする。白板に解決策を書きだして、実行していく。リーダーが発したことに対して、みんなが、それぞれ動く。支援の時だって、誰もが行きたいと手を挙げる連中なんです。

支援に行って手動で機械を動かすことなど誰も嫌がらんのですよ。また、彼らは支援が終ったとき、あの苦しさの中で成長したと口をそろえる。そして支援先の感謝の言葉は忘れない」