子を持つ親にとって、「いい子」に育ってほしいというのは普遍的な願いだろう。だが、明治大学文学部教授の諸富祥彦氏は、「手がかからないいい子というのは、のちのち手がかかる人間になりやすい」と指摘する。教育の専門家16人が、先行き不透明な時代の子育てに「これだけは大切なこと」を語った書籍『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)から、その論稿を抜粋して紹介する。

※本稿は、おおたとしまさ・監修、STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ・編集『究極の子育て 自己肯定感×非認知能力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

周囲の期待に過剰に応えようとする「いい子症候群」

みなさんは、「いい子症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

「いい子」というからには、悪くないどころか、いいことのように思うかもしれません。でも、いい子症候群の子どもたちの場合、必要以上にいい子であろうとする傾向があるのです。

その大きな特徴としては、自分を抑えて周囲の人の期待に過剰に応えようとする、いま風にいえば、空気を読もうとするあまりに、自分というものがわからなくなっているということが挙げられます。

指に家族の絵
写真=iStock.com/Mukhina1
※写真はイメージです

自分がなにを食べたいのかすらわからない

いい子症候群の子どもたちの典型的な行動例を挙げてみましょう。

家族と一緒に食事に出かけたとします。普通の子どもであれば、たまの外食で、なにを食べようかと大いに興奮している場面ですよね。

でも、いい子症候群の子どもたちは、自分がなにを食べたいのかということすらわからない。なぜかというと、なにを食べたいといったら親が喜ぶのかというようなことばかり考えるように、小さいときから強いられてきたからです。

つまり、子どもをいい子症候群にさせてしまう最大の要因は、親の子どもとのかかわり方にあります。子どもが子ども自身の気持ちに従って行動できるようなかかわり方をしていないのです。