「おじさまマネジメント」の練習、復職前のウオーミングアップにも

少し前のことですが、敢えて年配の男性が多いチームを選んでプロジェクトマネジャーにチャレンジした30代後半の女性がいました。彼女は、比較的年配の男性が多い職場にいて、いずれチームのマネジメントをしなければいけなくなるので、プロボノで「おじさまマネジメント」を学びたいとのことでした。なかなかおもしろいプロボノの活用法ですよね(笑)。本業ではないから、評価に関わるプレッシャーもないですし、少しの失敗は、勉強だと思えばいいのです。「失うものはない」くらいな気持で挑戦してほしいと思います。

2018年、東京会場に集まった「ママボノ」
2018年、東京会場に集まった「ママボノ」(写真提供=サービスグラント)

「ママボノ」というプロジェクトもあるのですが、これは、育休中や、出産で一度離職したけれど復職を目指している女性を対象としたプロボノプロジェクトです。復職へのウオーミングアップの場として設けています。2013年から実施しているのですが、毎年驚くほどたくさんの女性が集まり、昨年は東京、関西、青森で100人が参加しました。10チーム以上を編成し、プロジェクトに取り組んでもらいました。

復職へのウオーミングアップに使うもよし、自分の既存スキルを磨くもよし、新しいスキルを得るための練習に使うもよし。転職を考えている人には、自分が持っているスキルの棚卸しにも役立つでしょう。しかも、社会貢献にもなります。仕事でもプライベートでもない「サードプレイス(第3の場所)」として、プロボノをうまく活用してもらえるとよいと思います。

ふるさとプロボノ、千葉県のNPOいすみライフスタイル研究所のプロジェクト
ふるさとプロボノ、千葉県のNPO「いすみライフスタイル研究所」のプロジェクト(写真提供=サービスグラント)

秋からは、「ふるさとプロボノ」というプロジェクトに取り組んでいます。これまでも行っていたのですが、今年は募集・支援地域を広げて大きく展開しています。これまでのプロボノは、どうしても都市部が中心でしたが、プロボノの力を地域とつなげ、農山漁村の活性化を図りたいと思っています。

まもなくサービスグラントでの累積の支援件数は1000件に、参加者実数も4400人となろうとしています。ただ、日本の社会人の数に比べれば、プロボノワーカーとして活動している方はごくわずかです。まだまだ潜在層はたくさんいますし、プロボノの力を求めている団体もたくさんあります。もっと多くの人に、プロボノに参加してほしいと思っています。

構成=髙田功

嵯峨 生馬(さが・いくま)
認定NPO法人サービスグラント代表理事

1974年生まれ。1998年東京大学卒業、日本総合研究所研究員を経て、地域通貨やNPOの可能性を広げる仕組みづくりに携わる。2001年、渋谷を拠点とする地域通貨「アースデイマネー」を共同で設立。2005年、サービスグラントの活動を開始し、2009年にNPO法人化、代表理事就任。著書に『プロボノ 新しい社会貢献 新しい働き方』など。