広報、マーケ、企画、総務、事務……役立つスキルは幅広い

「スキルや専門知識」というと、法律や会計などの資格を伴うものや、プログラミング、ライティングなどをイメージされるかもしれませんが、NPOなどが必要としているスキルはそれだけにはとどまりません。広報やマーケティング、企画、営業、総務、事務など、一般的な社会人が持つスキルで役立つものがたくさんあります。具体的に、どんな活動があるかご紹介しましょう。

事業立案を支援する「ICT救助隊」。オンラインのプロボノ活動も多い
「ICT救助隊」への事業立案プロジェクトのミーティングの様子。オンラインの活動も多い(上下とも。写真提供=サービスグラント)

サービスグラントでコーディネートするプロジェクトは、大きく3つに分けられます。1つ目は、団体の情報発信をお手伝いするものです。ウェブサイトのリニューアルやパンフレット、チラシの制作などコミュニケーション系の成果物を作るものです。

2つ目は、団体の運営改善につながるような支援活動です。限られた人数で運営している団体が多いので、非効率な部分があると活動に大きく影響しますから、業務や仕事の流れを整理してマニュアルを作ったり、組織作りを見直す提案をします。

3つ目は、事業戦略支援です。団体が現在の活動を進める中で、課題に感じていることは何かを探り、課題解決のためにはどんなことに取り組めばよいかを調査し、3年後、5年後などのスパンで目指すべき方向を定め、事業計画を立案します。

サービスグラントのプロボノが作成支援した、社会福祉法人子どもの虐待防止センターのウェブサイト
サービスグラントのプロボノが作成支援した、社会福祉法人子どもの虐待防止センターのウェブサイト

支援の対象となる団体は幅広く、子育て支援、教育支援、青少年の引きこもり支援、女性支援、女子学生のキャリア支援、DV被害者の支援などさまざま。児童虐待被害者支援、障がい者の就労支援、障がい者スポーツの支援、高齢者のサポート、高齢者の健康づくりなど、まさに「生老病死」ではないですが、人生のありとあらゆる場面に関わる課題に取り組む団体があります。プロボノワーカーは、自分が関心を持っている分野の団体を支援する人もいますし、あえてよく知らない活動をしている団体を選んで、これまで知らなかった社会課題について学ぼうという人もいます。

リーマンショックで関心、2010年が「プロボノ元年」に

サービスグラントが活動を開始したのは2005年1月ですが、活動が大きく広がったという実感を持ったのは、2009年から2010年にかけてです。毎年20~30人程度だったプロボノ活動の登録者が、2010年からは毎年200~300人ずつ増えていったのです。

ちょうどその頃はリーマンショックの後で、「お金で本当に幸せになれるんだろうか」という意識が強まり、社会起業家やソーシャルビジネスなど、社会貢献の魅力に人びとが気づき始めた時期だったと思います。「仕事を続けながら社会貢献に関わることができる新しいボランティア」ということで、プロボノに関心を持つ人が増えたのでしょう。ビジネス誌やテレビで、プロボノが続けて取り上げられたことも追い風になりました。私たちは、2010年を「プロボノ元年」と呼んでいます。

最近はさらに参加者が増えています。現在のサービスグラントのプロボノワーカー登録者は6000人ほどで、コロナ禍でさらに増えている印象です。今年の7月に行ったアンケートでは、プロボノ参加動機に関するコロナの影響の1つとして「社会課題全般に関わりたいと思った」ことを挙げた人が6割以上となりました。これ以外にも、在宅の時間が増え、自分の時間も増えたことが、プロボノに登録するきっかけになった方も多かったのではないかと感じます。