上司を選ぶことはできない。「出先から直帰せずに、俺のところに必ず寄って挨拶してから帰宅しろ」。そんな理不尽な上司に当たってしまったらどうしたらいいのか。両足院副住職の伊藤東凌さんは「そういう“変な上司”を変な上司のまま終わらせるのはもったいない。その指示の背景にどんな流儀があるのかを聞き、ほかにも流儀はありますか? と問えば、こちらから別の提案をできる余地も見えてきます」という――。

理不尽な命令やルールの奥には流儀がある

確かに若い人たちの中には、上司の命令やルールに違和感を持っている人が少なからずいるでしょう。

違和感に押しつぶされることはよくないことですが、目線をちょっと変えてみると、その理不尽な命令やルールの中には、あるものが潜んでいる可能性があります。あるものとは“流儀”です。

両足院 副住職 伊藤東凌さん
撮影=水野真澄
両足院 副住職 伊藤東凌さん

流儀とは、その人なりのやり方。「これはやってはいけない」というルールは共有しやすいですが、「こうやったほうがいい」という流儀は、一人ひとり違うもの。ですから、上司から何か理不尽な要求をされたら、理不尽に思っても、この人の流儀は何だろうと見方を変えると、何を伝えたいのだろうと一歩進んで考えることができます。

こういった理不尽なことを要求する上司とは、職場を離れたところで、ぜひいっしょに遊んでみるといいと思います。遊びこそ流儀がいりますので、もしかするとその人の流儀は遊びというカルチャーで培われたものかもしれない。最後はみんなで乾杯して一日を終わるんだということを大切にしているのかもしれません。

いっしょに遊んでみると、ただ押しつけているだけでなく、流儀が編み出された価値観を発見できるのです。

そう考えると「俺のところに必ず寄れ」というのも、最後に顔を合わせるということは、コミュニケーションを大事にされているのだなというふうにとらえられます。

懐に入ってから別の提案をする

しかし、その流儀に共感できない、違和感が残るのであれば、こちらから別の提案をしてもいいと思います。

その手順としては、まず「○○さんの流儀、素晴らしいですね」といって懐に入る。

次に「でも、ちょっと理解しきれていないところがあるので、もうちょっとくわしく教えてください」と一歩踏み込む。そして「こういうやり方もあるけれど、こういうやり方はどうでしょうか」と別のやり方を提案する。そこで、その上司は、そういうやり方があることに気づきます。