お寺の世界にも理不尽はある

お寺の世界も、理不尽といえば理不尽です。修行時代は掃除ひとつとっても、先輩から指示されるけれど、やり方は教えてもらえません。このエリアを30分でやるようにといわれて、手前からちょこちょこやっていたら、10分の1しかできない。

お寺の世界にも理不尽はあるという
撮影=水野真澄
「相手を理解し尽くすという態度が大事」と語る

そういう体験をすると、そもそも自分に知識がないこともわかりますし、体の使い方やスピードなど、自分で工夫してやっていけば、だんだんできていくことも体で覚えられます。

大事なことは理不尽なことをいわれても、なぜその人がそのやり方をするのか、流儀も含めて理解しつくすこと。その人の価値観をちゃんと理解し、こちらの仕事なり人生なりに生かしていくという態度が大事です。

「うちの上司は変な人」と思っても、見える構図と立ち位置で変に見えているだけかもしれません。反対に自分が素敵だと思っている人も、その上司と同じポジションで同じタスクを背負っていたら、変な人になっている可能性もあります。

理不尽な上司を「変な人」で終わらせない

「変な人」と、ざっくりとらえて終わらせないようにしましょう。こまかく見れば、いろいろな要素が潜んでいます。それに対してこちらもコミュニケーションして動くことが大切。

ただ上司からの指示を待ち、その指示をいつも理不尽だと思っていたら、いつまでたっても変わりません。これを勉強と思いながら、コミュニケーションを変えていくと、上司の横に並べるし、下から支えるのも楽しくなる。上司の可能性をもっと見たいという考え方までできるようになります。

変な上司が、たくさんの流儀を持つ素敵な上司に見えるかどうかは、あなた次第なのです。

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。