「『いくらでもいいから(在庫)ゼロにしろ』との指示を受け、4割引いたこともある」――三井不動産グループの現役営業マン、藤沢侑氏が言う通り、在庫整理に窮した不動産営業担当者が、マンション・一戸建ての大幅な値引きに応じるケースが頻発している。

「多くの業者の決算月である3月に近くなるほど、値引きに応じる可能性は高くなる。その代わり、タイトなスケジュールを呑んでいただきます。ただし、3月完成分だと突貫工事が多いので危険。12月くらいに出来上がったのを3月に買うといい」(藤沢氏)

とはいえ、各物件の値引きの限度は担当者のみぞ知る。素人の買い手が見極めるのは不可能だ。

その半面、担当者が1つでも多く在庫を減らしたいと切望しているのは事実。そんな担当者と値引き交渉にまで持ち込めるのはどんな買い手だろうか。藤沢氏によれば、売り手はまず、買い手が本当に欲しがっているかどうかを観察するという。

ローンシミュレーションをして資金計算を重ねている、くらいの真剣さが伝わらないと、値引き交渉は無理。
ローンシミュレーションをして資金計算を重ねている、くらいの真剣さが伝わらないと、値引き交渉は無理。

「ローンシミュレーションをして資金計算を重ねている、くらいの真剣さが伝わらないと値引き交渉は無理。こちらの望むスケジュール通り資金が支払えるよう、自己資金を確保しておくことです。購入動機も重要。経験上、そこが曖昧な客はキャンセル率が高い。割引の稟議を取るのは大変なのに、契約前日になって『やっぱりやめました』では話にならない」(藤沢氏)

親が近所に住んでいる、子供が進学する学校のそばだから……等々、買うストーリーが明確であるのがよい。

「銀行のローンが通るか否かわからない。資金不安のある人もお断り。一番嬉しいのはキャッシュです。手続きが格段に減るから。もう500万円引いちゃってもいいくらい」(藤沢氏)

値引きを他言しないと約束できるかも重要だ。買い手は、金額以外のこうした諸条件は絶対大丈夫、とアピールするといい。そうすれば、売り手も値段の交渉に集中できるからだ。

「そのうえで、買い手から値引きをオファーすることが大事。それでダメなら粘っても仕方ない。値段は“言った者負け”の面がありますが、担当者側から切り出すのは、定価で買ったお客様への良心の呵責もあるから難しい。もし僕が買い手から切り出されたら、『とりあえず無理ですけど、社内で稟議が通ったら絶対買いますか?』と聞き返します。イエスなら半分ぐらいは成立しそう」(藤沢氏)

では、買い手は売り手のこうした心理をどう突けばいいのか。サラリーマン大家の指南役で不動産投資に長けた藤山勇司氏に、4000万円の物件を例にとってご指南いただこう。