ベルマーク活動は女性蔑視の象徴
しかしバブル期のような「経済大国ニッポン」と言われていた時期は終わったとはいえ、今のニッポンは70年前の敗戦直後とは違い、一応G7の一員で先進国です。そんな中、子どもたちが事前に切り取ってきたベルマークを回収して整理し、計算機で点数を出し、会社別にベルマークを用紙に貼りつけるという、今の常識で考えて「全く利益にならない」ことをPTAのお母さんたちは「平日の朝」にやらされているわけです。
ベルマークの利益に関しては、「お母さんが何十人も集まって作業してやっと数千円」という日本が貧しかった頃の内職を思い出させるような額です。どう考えても割に合う金額ではありません。それなのにベルマーク活動がなくならないのは「女なら仕事だのお金だのゴチャゴチャ言わないで、子どものために活動しろ」という「上から目線の体育会系」が幅を利かせているからです。
そういう意味で、PTAのベルマーク活動はニッポンの女性蔑視の象徴とも言えるかもしれません。現に平日朝のベルマーク活動に父親が参加することは、まずありません。「暗黙の了解」で、令和になった今でも「利益があまり出ないし、平日の朝に駆り出されるけど、やっぱりやらなくてはならないわよね」と女性に無理やり納得させて続いている、まさに「ダレ得でもない活動」なのでした。もちろん全国の学校のお母さん方から不満の声が上がってはいるのですが、「ベルマーク活動がなくなると、他のもっと面倒くさい内容のPTA活動に駆り出されるから、それだったら、まだベルマーク活動のほうがいい」という意見もあるのです。
母親を学校や地域の「お手伝いさん」にしてはいけいない
それではお母さんが語る「もっと面倒くさいPTA活動」とは何かというと、学校行事の運営を手伝わされる、地域に学校や生徒の様子を伝えるための広報の一環として資料作りをさせられる、果ては週末に町内会主催の盆踊りやお祭りの手伝いに駆り出される、といったものです。「PTAは学校のものなのに、なぜ地域の盆踊りの手伝いを?」と思いそうなものですが、厄介なことにPTAの活動内容には「地域の特性を生かした行事に参加する」というものが含まれているのです。そのため女性たちが当たり前のように週末も地域の活動に駆り出される地域もあります。
ここから分かるのは、PTAのお母さんたちというのは基本的に「学校や周辺地域のお手伝いさん」として見なされていることです。これでは昭和の時代に夫の家族の「おさんどん」にお盆や正月ごとに駆り出されていた女性たちのようです。「義理の実家」を「学校」や「地域」に置き換えれば構造は同じです。「女ならそれぐらいやるのが当たり前でしょ!」という「体育会系的な上から目線」の根底には、「女はどうせ家でヒマしてるから、タダで活動に駆り出してしまえ」という発想があるのでした。もちろんそういう発想をする人は当たり前のように「女性の人件費はタダ」だと考えています。