新型コロナウイルスとの闘いは、まだまだ続きます。2021年のオリンピックも、感染者をゼロにしてから開催するのは不可能です。20年5月25日、緊急事態宣言が解除されましたが、普通の生活に戻っても医療崩壊はほとんど起きないと思われます。そうであれば、若干乱暴な言い方になるかもしれませんが、今後は重症化による死者を少なくする努力をしつつ、自粛は全部解除して普通の生活に戻したほうがいいのではないでしょうか。もし感染者が出たら、学級閉鎖をするように、その都度感染が広がらないように対処していく。そうやって集団免疫を獲得していって、新型コロナウイルスに打ち勝つしかありません。

自然免疫は体内の「警察官」

社会全体で見ると、最大の対抗策は集団免疫になりますが、個々人としては免疫力を上げることも重要です。

一日のうち、人間の体内に1兆個の細胞ができるなかで、遺伝的に出来そこないのがん細胞が5000個も含まれていると言われています。それを見つけ出して除去したり、外から入ってきた異物を真っ先に叩くのがNK(ナチュラルキラー)細胞です。NK細胞は小さな異物の処理を担当するリンパ球の一種で、もっとも代表的な自然免疫。働いている時間が一番長く、全身をくまなくパトロールしている、いわば体の最前線を守る警察官です。不良少年を巨悪にならないうちに排除するので、体の治安がよくなります。

獲得免疫は自然免疫では勝てないときに働きます。代表的なのは、T細胞やB細胞。NK細胞が警察官なら、こちらは軍隊。B細胞がつくり出す「抗体」はミサイルのようなものです。ワクチンは、有事に備えてミサイルを打たせる軍事訓練と考えてください。

軍隊は強固にできているため、放射線を浴びたり、抗がん剤を使ったりしないかぎり、弱まることはほとんどありません。年を重ねてもシステムは健在なので、ワクチンを子どもに打っても100歳のお年寄りに打っても、同じように効果があります。

しかし、自然免疫は獲得免疫のように強固ではありません。コンディションによって、弱くなったり強くなったりすることがあります。NK細胞の活性はピークが20歳で、その後落ちていくという報告もあります(図)。いわゆる「免疫力が落ちる」というのは、このように自然免疫の活性が弱まった状態を指します。体内で不良少年が増加し、巨悪に成長してしまうと、治安が悪くなります。長生きしたければ、常日頃から警察官を強くしておく必要があるのです。

加齢でNK細胞の活性は低下する!