19年に小泉進次郎環境相が現役大臣として初めて育休を取得しました。リーダーが率先して取得すれば、その下にいる男性も取りやすくなる。勘違いしている男性が多いですが、育休は「休み」ではありません。育児は、親として男女一緒に行うのが当然の「仕事」です。それがどれだけ大変かわからない人が多いから、電車にベビーカーを乗せると舌打ちされたりするわけです。そんな社会で子どもが増えるはずはありませんし、カルチャーを変えないと。

日本は成熟した先進国としてもっと幸せ度の高い社会を目指すべきです。だから男性の育休をあたり前のものにしたいのです。男性が育児を体験すれば、それを機に家庭における夫婦の家事・育児分担がより公平に変わっていくことが期待できます。フランスでは、約2週間の男性の育休が事実上義務化されており、実際に出生率がだいぶ回復しています。

女性議員が増えれば、現実に沿った政策が実現していく

――幼児教育・保育の無償化についても、ずれているという意見が多いです。

「まず待機児童を減らすべきだ」「無償化による保育の質の低下が心配」といった声も多く、女性のリアルな声に応えているとは言い難いかもしれません。だからこそ、女性リーダーを増やすことが大切なのです。女性議員が増えれば、現実に沿った政策が実現していくはず。私自身もその1人として、今を生きる女性たちの声を政策に反映していきたいです。

▼インタビューを終えて
政治の世界もビジネスの世界も女性リーダーが増えない原因は同じなのだと実感。政治の世界こそ働き方改革が必要です。ただし、ビジネスリーダーの評価軸が「業績」であるのに対し、政治は「票」という形で有権者が評価することになります。まずは、国をよくするためにはどういった評価軸で投票すべきかを有権者である私たちがきちんと理解してこそ、政治の世界に多様な女性が進出できるのです。小泉環境相の育休について、育児体制が整っている家庭で父親が休む必要があるのかといった反対意見もありましたが、産後の女性を支える手が足りないから男性が「手伝う」という考えそのものがおかしい。男女問わず親としての仕事をまっとうするのは当然のこと。それをリーダーが率先して体験することが、少子化や女性活躍についてリアルな対策につながる第一歩なのだとあらためて実感しました。(プレジデント ウーマン プレミア 編集長・木下明子)

構成=辻村洋子 撮影=神ノ川智早

松川 るい(まつかわ・るい)
自由民主党 参議院議員

1971年生まれ。東京大学法学部を卒業後、外務省に入省。国際女性会議「WAW!」の設立などに携わる。2016年に退官、同年の参議院議員選挙で初当選。自民党国際局・女性局次長。11歳と6歳の2児の母。