「有事に急遽中止」をしない浅草の冷静さ

隅田川花火大会は毎年2万発の打ち上げ花火を花火師に発注し、青森ねぶた祭や仙台七夕まつりは、1年の約半分を新作の制作と本番準備に費やす。有料観覧席を販売する祭りの場合、チケット販売に座席や警備の手配キャンセルといったスケジュールも絡む。総じて大規模な祭りほど、撤退は速やかに行わねばならない。

浅草寺の志ん橋大提灯
浅草寺の志ん橋大提灯(写真提供=浅草観光連盟 365ASAKUSA)

一方、1年間大切に保管された伝統の神輿や山車を毎年お披露目する類いの祭りは相対的に準備期間が短く、3日間で200万人の見物客が訪れる三社祭でも6~7週間だ。

自粛ムードの中SNSによる市民の監視網が広まり、3月には首都圏各会場で予定通り実施された一部の興行への批判が見られたように、隣県で同時期開催の夏祭りが相次ぎ中止となる中、地元の祭りが実施可能性を残すとなれば疑問の声も県内外で上がるだろう。しかし、祭りの開催には毎年グランドスケジュールを引いてプロセス立てた準備が行われるように、浅草は有事に急遽中止を決定するのではなく、平時と同様に必要期間を計算し、結論を出す時期もあらかじめ定めた。冷静で計画的な取り組みは、悲観論と開催期待の間で揺れる他の地域にも参考となるのではないだろうか。

緊急事態宣言が全国に拡大された翌朝、東京オリンピック開催に向け7年ぶりに新調された浅草寺の大提灯が、奉納式が自粛となる中、ひっそりとお披露目された。浅草の気質を「シビック・プライド」と表現する関係者は、志ん橋大提灯が本堂に設置と同時にライトアップされる動画を、「久しぶりの明るい話題です」と見せてくれた。安全や経済を脅かす暗いニュースが続く中、地元に根付く文化まで痩せ細らないよう、「住民の心意気」で希望の光を灯し続ける下町の象徴が帰ってきた。

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