重要なのは「資料に頼らない練習」
私もプレゼンや講演のときには資料はほとんど用意せず、事前にストーリーラインと重要な3つのポイントだけを頭に入れておく。これは、実は私が面倒臭がりだからだが、この副産物としてプレゼンが上手くなるのだ。
というのも、資料に頼れないので、内容を覚えるしかなく、するとより深く内容を理解するようになるし、プレゼンの重点やメリハリもつかめるようになるからだ。
もちろん人によって脳の個性が違うので、結局は自身に合うアプローチを選ぶのが重要だ。しかし総じて何かをやらないと決めると、それを補うべく脳は他の機能を強化するというのは、よく知られた脳科学の事実である。
逆になまじ資料に頼りすぎると、冒頭の本部長のように、ひたすら読むことに終始してしまう。これではもとから弱いプレゼン能力が、ますます退化の一途をたどってしまうだろう。
考えてみれば、昔の人は資料もマイクもなしに、大勢を説得したはずだ。毎日過酷なトレーニングをして素手で戦い、観客を沸かせる格闘家のように、全力で資料を用意しても決して棒読みしたりせず、話の骨子を覚えたうえでプレゼンに挑もう。
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欧州系投資銀行、米系戦略コンサルティングファーム、米系資産運用会社で勤務したのち、香港・シンガポールに移りプライベートエクイティファンドにて勤務。現在は日本とシンガポールを拠点に、投資×企業イノベーション×グローバル人材(採用・研修・コーチング)の3領域で活動。インフルエンサーとしても知られており、東洋経済オンラインでのコラムは1人で1億PVを達成。主著の『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『一流の育て方』(ダイヤモンド社)などのベストセラーは6ヵ国語で展開され、累計60万部を突破。2017年翔泳社ビジネス書大賞受賞。2020年よりビジネスコミュニケーション能力を高めながら仕事の教訓を学ぶ、「マンスリービジネススクール」をコンセプトにしたオンラインサロン「最強&一流の基本」を開設。