マネジメントの最小単位
セルフマネジメントにおいて大事な単位は、瞬間です。瞬間はすべてのマネジメントにおいて最小の単位であり、瞬間から瞬間の間に何が起きていて、どのような体験を自分が得ているのかを知り、その体験から自分が何を感じ、どんな結果を得ているかを理解することからセルフマネジメントは始まります。
瞬間とは、文字どおり「瞬く間」です。人は生まれてから死ぬまで、瞬間の連続の中で生きています。あなたの人生は連なった瞬間の一つひとつから成り立っています。それらは人生が演じられる舞台です。各瞬間を約3秒間とすると、1日は28800瞬間あります。心理学者のミハイ・チクセントミハイとブランドン・ソレンソンは、寝ている時間を除くと1日は大体20000瞬間くらいと推計しています。
また、2010年のハーバード大学の研究によれば、わたしたちはその約半分の時間は気を散らしたり、ぼんやりしたりして過ごしているといいます。ということは、残りの10000瞬間をどのように捉えて、反応するかが、人生で得られる結果に大きく影響するということです。
わたしたちが対処できるのは、「その瞬間に起きていること」だけです。過去や未来をいまこの瞬間に変えることはできません。人はいまこの瞬間から次の瞬間に起きる事象に対して反応し、決定し、行動し、結果として何かを得ています。人生はその繰り返しです。いままでと違った結果を求めるのであれば、まず瞬間に着目しましょう。これは、多くの人が見過ごしていることです。
全体像や大局を見ることは大切なことですが、瞬間の積み重ねが大局につながっていることを忘れないでください。新たな結果は、瞬間における新たな選択肢からしか生み出せないのです。セルフマネジメントとは、瞬間のマネジメントともいえるのです。
人の特性を理解し、変化のきっかけをつくる方法はたくさんあります。しかし、瞬間にフォーカスしているものをわたしはほとんど見たことがありません。すべては瞬間で起きているというのに。これは考えてみれば不思議なことです。わたしはなんとかこの領域にアクセスするツールを生み出すためにこのプログラムを開発したといってもいいくらいです。何度も強調しますが、瞬間のマネジメントができずして、今日や明日のマネジメントができるわけがないのです。
望む結果を得るためのプロセス
もう少し詳しくセルフマネジメントのプロセスを見ていきましょう。わたしはこのプロセスをインテンション・リザルト・マップ(IRマップ)と呼んでいます。これは、いま得ている「望んでいない結果」を「望む結果」へと近づけていくためのロードマップです。このIRマップが使えるようになるには、準備が必要です。ここでは、簡単にIRマップとはどのようなものかをご説明します。
IRマップのひとつの使い方は、いま自分が手にしている「望んでいない結果」を逆から分析する、というものです。望んでいない結果は、自分自身のどのような意図や選択によってもたらされたのか、順に辿っていくのです。そしてその情報を基に、「本当に望む結果」に至るためにはどこに意識を向けるべきかを明らかにします。その意識の向け先や向けるときのエネルギーの強度によって、新たな選択肢が生まれます。新しい選択肢からは、新しい行動が引き起こされます。その行動から新しい結果が得られます[図表5]。
その結果を基に、このプロセスを繰り返すのです。そう、あなたが本当に望んでいる結果が得られるまで。IRマップは、望んでいない結果と望んでいる結果のギャップの背後にあるものを明確にするツールといえるでしょう。
IRマップの使い方は本書で詳しく説明していますが、ここではひとつだけ重要なことを覚えておいてください。あなたがいま手にしている「望んでいない結果」は、「本当に望む結果」に近づくための貴重な情報だということです。