強い伝染力の一方で、致死率は今のところ2~3%程度と見られている。これは感染者の約10%が死亡したSARSに比べると低い。

亡くなる感染者の多くは持病を持つ高齢者

SARSは感染すると短期間で重症化するケースが多く見受けられたが、新型コロナウイルスは潜伏期間が長く、重症化に至らない人も多い。重症化して亡くなる感染者の多くは持病を持つ高齢者とされている。世界で最も高齢化が進んだ日本にとってはリスクだが、日本の医療体制をもってすれば過度に怯える必要はないのかもしれない。状況を見極めて冷静に対応すべきだと思う。

新しく発見されたばかりのウイルスだからワクチンはまだない。「インフルエンザとエイズウイルスの治療に使う抗ウイルス薬を混合して投与したら症状が劇的に改善された」とか、「抗エボラ薬が効いた」といった情報が錯綜しているが、WHO(世界保健機関)によればワクチン開発の見通しは「18カ月以内」とのこと。まだ時間がかかるから、当面は対症療法に頼らざるをえないが、それでも十分に回復はできる。

新型コロナウイルスの中国および世界での感染拡大を受けて、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したのは20年1月30日。その際の記者会見でテドロス・アダノム事務局長は新型ウイルスの封じ込めに向けた中国の取り組みを「これほど積極的に対策を講じた国を見たことがない」と絶賛した。テドロス事務局長はエチオピアの保健大臣や外務大臣を歴任してきた人物。エチオピアといえば、中国から巨額のインフラ投資を受けている国で、テドロス事務局長と中国の習近平国家主席は昵懇の間柄なのだ。

チャイナマネーにどっぷり浸かった事務局長の言動だけに相当割り引くべきだと思うが、WHOの緊急事態宣言にほぼすべての政府が過剰に反応している。たとえばアメリカは中国への渡航警戒レベルを最大の「レベル4」に引き上げ、航空大手3社は中国便をすべてシャットアウト。20年2月2日には、14日以内に中国渡航歴のある外国人の入国を禁止に。日本政府も湖北省や浙江省に滞在歴のある外国人を入国拒否の対象にしている。

入国制限や国境閉鎖など防染措置は各国で強度を高めているが、当の中国でも都市の封鎖が広がっている。すでに湖北省は全域が封鎖され、中国全土で55都市以上が封鎖されたという。5億人以上が隔離されたともいわれるが、どこまで実効性があるかはわからない。