「顧客の若返り戦略」陥りがちな落とし穴とは

なぜなら、若い世代が求める「ニーズ(コンセプト)」にまでは、目が向きにくいから。

ここ数年、寝具にまつわるキーワードは、圧倒的に「健康」「快眠」と「オーダーメイド」。西川やロフテーのような大手以外にも、整形外科医が医学的観点から作る「整形外科枕」(山田朱織枕研究所)や、職人が一つひとつハンドメイドで作った生地を用いる「まくらぼ」(Futonto)など、ニッチなブランド枕まで、続々と登場しています。

多くは若い世代より、50代以上の男女に好評です。もし西川が、30代に向けても「まず寝具ありき」「健康や快眠ありき」で発想していたら、「美容睡眠」というキーワードは浮かばなかったでしょう。

商品開発に行き詰まったらすべきこと

ところが森さんたちは、いったん寝具という縛りから離れ、「自分も含めた働く女性は、何に悩み、何を欲しているのか」という、根本的なブレストから始めました。だからこそ、自由な発想で「美容」という新たなキーワードにたどり着いたのだと思います。

ターゲットのニーズを知るには、やはりその年代や立場に近いメンバーが、意見出しに加わることが望ましい。さらにその場合、自分たちのホンネを自由に言い合える環境づくりも大切です。

皆さんの会社でも、新たなターゲットへの商品開発に行き詰ったら、まずはターゲットに近いメンバーを集めて、「自由に」発想することから始めてみませんか?

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牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。