“先輩”の言うことは素直に聞く男たち
それが、セミナーが終わるころには身を乗り出して、「家事も育児も、やっていたつもりだったけれど、全然やってなかった!」と言うようになります。男性はタテ社会で育っているので、“先輩”の言うことなら耳を貸します。「僕も昔は苦労した。あまりにも家のことをやらないので、妻にいつも叱られていた。最初から『スーパーイクメン』の人なんていないよ」と言うと、「安藤さんでさえそうなのか」と話を聞いてくれる。
僕らは、まずは「よく頑張ってるよ」と受け止めてあげます。そして「もうちょっとだけやり方を変えれば、必ず家族から愛されるパパになるよ。僕たちもそうだったから」と話すわけです。
こうした男性には、まずは「名もなき家事をやろう」と言っています。掃除機をかけるだけでなく、掃除機にたまっているゴミを捨てる、トイレットペーパーがなくなりそうだったら補充する、花瓶の水を換える、便座を拭く。これまではいつも「誰か」がやってくれていたことです。意識しないとなかなかそういうことには気づけません。
「レベルZ」の男に幸せな老後はない
ちなみに、僕らの間では男性の風呂洗いにはランク付けをしています。
風呂洗いを依頼されたり、担当になっている夫の多くは浴槽の中しか洗いません。この程度だと「レベルC」。浴槽だけでなく洗い場もきれいにすると「レベルB」。ここまでは何とか到達できますが、次からがなかなか難しい。1週間に1回、排水口の髪の毛を掃除するところまでできたらようやく「レベルB’(ダッシュ)」です。そして、シャンプーやリンスが切れそうになっていないか確認し、なくなりそうになっていたら詰め替える。これが「レベルA」です。
ファザーリングジャパンの理事たちは、このさらに上の「レベルS」です。消耗品の在庫管理をして、なくなりそうだったら買っておくところまでやっているんです。シャンプーやリンスはもちろん、トイレットぺーパー、ティッシュ、洗濯洗剤、水や米、サラダ油、妻が飲むビールなど、重い物やかさばるものを買って、所定の位置においています。物流業界で言うところの、サプライチェーンマネジメントです。
いきなり「レベルS」になるのは難しいですが、こうして具体的な話を聞けば、みんな行動を変えて1ランクは上がるんです。家族みんなが楽になるし、妻がイライラしなくなる。
自分がお風呂に入っていて、石鹸が小さくなっているのに気付いて「おーいママ、石鹸切れてるぞ」と妻を呼んだりするのは「レベルZ」。まず、これでは豊かな老後はないでしょうね。今は働いていて、お金をもたらすATMだから妻もご飯を作ってくれるかもしれませんが、ATMが機能を終えた定年後は真っ先に断捨離されて、熟年離婚まっしぐらですよ。