将来の夫に年収900万円を求める女子大生
僕が毎年、授業をしているある女子大では、「専業主婦になりたい人?」と聞くと、3、4割の手が上がります。
去年の授業で、教室にいる学生の1人に、「10年後に結婚しているとして、夫には年収どれくらい稼いでいてほしい?」と聞いたところ「900万円くらいでいいです」と答えました。ちょっと遠慮して、1000万円より下げたんでしょう(笑)。
「今、30歳の平均所得は400万円を切ってるんだよ」と言うと、「えー! 困ります」と言うんです。「ママになったら、ママ友と代官山のカフェでランチをしたいのに」と言うわけです。「そりゃ無理だな。行けるのはファストフードくらいかな」と言うと「どうしたらいいんでしょう……」。
「きみも働けばいいんじゃない? 夫が400万円で、自分が働いて350万円だとしたら、世帯年収750万円くらいになる。代官山は難しいかもしれないけど、中央線沿線だったらランチできるんじゃない?」
だいたいこんな話をした後で、家庭での父親の役割や、父親が育児に参加すると母親のためにも、子どもの成長にもいいんだといった話をします。それから90分の授業の最後にもう一度「この中で、専業主婦になりたい人」と聞いたところ、手を挙げる人はゼロになりました。
僕が大学生のころは、奨学金で大学に来ている人の割合は10%程度でしたが、今は半数が奨学金だそうです。これから、日本の景気が急速に良くなって年収が増えるとは考えにくい。そうであれば、夫婦で働いて、ハイブリッドで家事や育児もやっていく方がいいに決まっています。
そういうリアルな考え方を、家庭でも教育の現場でも教えていく。ジェンダーギャップの解消には地道な行動が必要ですが、僕ら大人ができることはたくさんあります。
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東京・池袋生まれ。1985年明治大学卒業後、有紀書房に入社、書店営業で全国の書店を歩く。86年リットーミュージック入社、音楽雑誌・楽譜等の販売に従事。88年UPU入社、雑誌「エスクァイア日本版」「i-D JAPAN」の販売・宣伝担当。94年大塚・田村書店の3代目店長になる。96年東京・千駄木の往来堂書店をプロデュース、初代店長を務める。2000年オンライン書店bk1へ移籍、02年まで店長。その後、糸井重里事務所を経て、03年、NTTドコモの電子書籍事業に参加。2004年楽天ブックスの店長。その後、クロスメディア事業に従事、07年退社。2006年11月、父親の子育て支援・自立支援事業を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパンを創立、代表を務める。