日本酒は高度経済成長後期に最も飲まれた
ピークのころはいわゆる高度経済成長の後期。日本人ががむしゃらに働いた時代だ。後述のように当時はまだビールやワイン、焼酎が市場に少なかったこともあり、酒といえば日本酒がメイン。日本酒は働く日本人の心と体を癒すよりどころだった。
だから、なにかといえば酒を飲んだ。結婚式、歓送迎会、祝賀会、祭り、会合、寄り合い。ハレの日ばかりでなく会社帰りに同僚と一杯だし、葬式でも飲んだ。家庭でお父さんは晩酌をするものだから、台所には必ず一升瓶やパック酒が置かれていたものだ。日本人の生活に密着した酒、それが日本酒だった。
お酒の消費で減少しているのは日本酒だけではない。ビールをはじめとしたビール系飲料や焼酎、少しV字回復はしているがずっと低迷していたウイスキーも酒離れの象徴だった。いずれにしても、グラフ全体の山が右肩下がりであることは明白で、日本人がお酒を飲まなくなってきていることが見て取れる。
昭和50年代からはビールが台頭してきた
日本酒を飲まない理由にはいくつかある。あげてみよう。
理由その1:飲むべきほかの酒が増えた
昭和50年代からはビールが台頭してきている。それ以前はビールは高価な飲み物だったが量産体制が整ったことと、家庭での冷蔵庫の普及で一気に需要を伸ばした。また、のど越しもよく夏の暑い日本には必須の飲み物となり、全国のビアガーデンやビアホールが盛況だったことを覚えている人もいるだろう。
昭和から平成に代わる、いわゆるバブル期からはなんてったってワインだ。ボジョレー・ヌーヴォー人気、赤ワイン健康ブーム、ソムリエの登場、低価格輸入ワインなどがいまも続きワインは好調に消費を伸ばしている。
平成12年(2000年)ごろからは本格焼酎ブームもあった。一升瓶3万円とも5万円ともいわれる、森伊蔵、魔王、村尾の「3M」が話題になった。
つまり、日本酒以外にも飲むべき、楽しむべき酒類が、市場にあふれてきたのだ。さまざまな酒類の中で日本酒は取り残されてしまったのだ。