僕自身も現場に行ったことはないけれど、ネットで調べただけでアメリカとメキシコとの国境管理がずさんなことはすぐにわかる。自由に行ったり来たりすることができるし、麻薬の密輸入なんかも平気で行われているんだろう。
こんな状況を見て、本物の政治家ならどうするか。
解決策は、国境を厳格化するという当たり前のことだけだ。トランプは「万里の長城」というインパクトのある言葉で表現したから、全世界に衝撃が走っただけ。実際は、ごくごく当たり前のことを言っているにすぎないんだよね。
アメリカ・アーリントン墓地が「無宗教」であるわけ
トランプは、イスラム教についても言及している。
「イスラム教徒は入国させない」と強烈なメッセージを発したんだ。宗教に触れるのは、政治家にとってタブー中のタブーとされている。僕はイスラム教を全否定するつもりもないし、嫌悪するつもりもない。でも現実問題として、中東のIS(イスラム国)は、イスラム思想の一部の過激主義者が行っているのは間違いない。
だけど、民主党のオバマ前大統領も、トランプと闘った大統領候補のヒラリー・クリントン氏も、テロに対して「イスラム」という言葉は絶対に使わなかった。これは、「宗教に対して寛容であれ」というポリティカル・コレクトネスによるものだ。ワシントンの政治家の間ではそれが当たり前になっている。
ポリティカル・コレクトネスの「やりすぎな例」を紹介しよう。
かつてオバマ前大統領は、クリスマスに「ある命令」を出した。公の施設や政府の施設では、「メリークリスマス」ではなく、「ハッピーホリデー」と言うことに切り替えたんだ。だからアメリカでは、公共施設では「メリークリスマス」とは言われなくなった。公共の施設ではクリスマスツリーも飾れなくなった。なぜなら、クリスマスはキリスト教のお祭りだからだ。
キリスト教徒ではないアメリカ国民に配慮しよう、キリスト教以外の宗教にも寛容であろう、という考えなんだろう。でも、これってやりすぎじゃないの?
この場合は「メリークリスマス」を禁じるよりも、どんなお祝いの挨拶も認める、というやり方のほうがいいんじゃないか?
アメリカという国を守るために命を落とした兵士を祀るアーリントン墓地は、「無宗教」施設とされている。この墓地は、キリスト教でもユダヤ教でもイスラム教でも仏教でも、どんな宗教のかたちで祀ることも許されているらしい。これこそが真の寛容性だと思う。