パリ19区の庶民的な地区にあり、レンガ造りの元印刷工場を改装した建物は、レトロな雰囲気でスタイリッシュ。メインの部屋に20余りの仕事机が並び、イヤホンで音楽を聴きながら各人が資料やPCに向かう。ここでは電話や声高なおしゃべりは禁止だが、併設のキッチンや中庭に面したテラスならOK。打ち合わせ用の個室や、小さな展示会を開催できるサロンも利用できるので、多彩な起業家やフリーランサーが集う。

アイデアに行き詰まったら、ラップトップの常駐スタッフに自分のプロジェクトの相談にのってもらったり、デザイナーやクリエーターを紹介してもらうことも可能だ。毎月ラップトップが主催する流通やUXデザインなどの勉強会への参加も無料。

こうした人との結び付きやノウハウの提供も含めた環境が、ポーリーヌさんが理想とする“コワーキング”スペースなのだ。

1 2018年から拡張したシェアオフィス・ラップトップのイべント空間。利用者は無料で勉強会に参加可能。熱い議論が交わされる。2 元は19世紀築の印刷工場だった建物。鉄枠のガラス窓に囲まれた、採光の良い快適な空間。3 キッチンで作った温かい飲み物を手に、テラスで休息する利用者。オリーブの木など観葉植物を育てるテラスの向かいが、別棟のアトリエ。4 意見交換の機会も多い、刺激のある環境。
【田舎編】牧草地が広がるのどかな農村で、田舎暮らしを楽しみながら。ストレスフリーで働く
(上)オフィス環境が整うメインのシェアオフィス。納屋を改装した建物の2階にあるので、天井が高くてゆったり快適だ。(下)スタッフと利用者が一緒に囲むランチは母屋の食堂で。敷地内の農家のりんごジュースも食卓に。1泊3食付きで1人24時間利用50ユーロ。

余暇も同時に楽しむ“ウォーケーション”

田舎暮らしを満喫しながら仕事ができたら……。家賃が高くてストレスの多い都市を離れ、地方で働きたいと望む人が増えているのは世界的な傾向といえる。とはいえ移住はハードルが高いので、シェアオフィスならば利用してみたい。そんな願いを持つ人々を引きつけているのが、パリから片道約2時間、ペルシュ地方の広大な農園を改装した「ミュティヌリー・ヴィラージュ」(以降ヴィラージュ)だ。

パリから近隣の村に移住したヴィラージュの責任者、クレモンスさん。

パリのシェアオフィスを運営していたオーナーきょうだいが、実家の農園で滞在型のヴィラージュを始めたのは4年前。単なるオフィス空間の提供なら、街に急増するネットカフェでも事足りる。ならば利用者にとって、また主宰する側にとっても心地よく有意義な時間が過ごせる環境に特化したいと、18年にパリの事業をたたみ、この地に根を下ろした。