「今は本当に幸せ」と語る彼女が乗り越えてきたもの
それは自分も失敗を乗り越えながらつかんできたこと。元をたどれば、育った家庭に原点があった。そもそも磯井家は香川県で漆の伝統工芸を受け継ぐ旧家。長男は家を守るものとして大切にされ、保守的な家風が根付いていた。父親は家業を継がず東京の企業に就職したが、長女の磯井さんは厳しい家風の下で育つ。幼少から習っていたピアノで音大を目指していたが、いつしか親の考え方に違和感を覚えるようになった。女性はこう生きなきゃいけないという思いが強く、お金のために働くことは良くないという。そんな親の反対を押し切って、いわば対極の道である金融の世界へ飛び込んだのだ。
「周りにもあまりロールモデルになるような女性のリーダーがいない環境で闘ってきたけれど、今はありのままの自分を受け入れてもらえる環境がある。だからこそ、後に続く人たちにも自分の個性を活かせるような環境を提供したいのです」
今は学歴や語学力にもこだわらず、より多才な人材を発掘して採用することが面白い。それぞれの成長を見るのが何より楽しいから、と磯井さん。かつては自分も肩肘を張っていたが、自然体でいられるようになったという。
休日には信州の高原へハイキングに出かけたり、好きなワインを楽しんだり、リラックスできる時間も増えた。ならば「月曜日の朝はもうつらくない?」と聞けば、「今は本当に幸せですよ!」と。飾らぬ笑顔が輝いていた。