各企業の女性管理職のみなさんにお話を聞く、人気連載「女性管理職の七転び八起き」第5回です。今回取材したのは、外資系・日系グロ-バル企業への転職をサポートする人材紹介会社「ロバート・ウォルターズ・ジャパン」の人事チームで、アソシエート・ディレクターを務める磯井麻由さん。華々しいキャリアに秘められた、新人時代の苦悩や、海外で経験したマイノリティーとしての葛藤、マネジャー1年目の際の失敗談等を包み隠さずお話しいただきました。「今が本当に幸せ」――そう語る彼女が今日までに乗り越えてきた試練の数々とは?

毎朝5時起きの新社会時代……月曜の朝がつらかった

もともと海外志向が強く、ロンドン大学、一橋大学大学院を卒業後、外資系大手投資銀行へ。さぞや順風満帆なキャリアを歩んできたように見えるが、磯井さんは苦笑まじりにこう顧みる。

「金融時代は月曜日の朝がつらかったんですよ。週末の休日が終わるのがイヤで、日曜の夜くらいになると、翌朝、何か警報が出ないかなと思ったりして……(笑)」

毎朝5時起きで、6時には出社。日本企業向けに年金基金の営業を担当し、競争が激しい中で企業訪問のノルマに追われる。外資系企業でも営業の現場では飲み会やカラオケなどの接待が日常茶飯事で、身体もきつく、女性の働きづらさを痛感させられた。

無意識の“被害者意識”に気づいたスイスでの経験

やがて磯井さんは一念発起、スイスのプライベートエクイティファンドへ転職する。だが、そこではさらに人種や異文化の壁にもぶつかることになった。

「社内で日本人女性は私一人、そもそもアジア人が少ないのです。あまりにマイノリティーで、スイスの方たちもどう接していいかわからないようでした。皆さん、チューリッヒにあるトップのビジネススクールを出ていて、ドイツ語で会話しているような環境では、私も異色な存在だったと思います」

ことに海外で外国人女性が就労する困難を感じたのは、住む部屋を探すときだ。アジア人の女性一人というだけで偏見を持たれ、部屋が空いていても貸してくれないこともある。最初に借りられたのはシャワーも共同の狭い一室。さすがにドイツ人の同僚に相談すると怒り心頭で助けてくれたが、そうした経験を通して自分なりに気づくこともあったという。

「実は自分の中でも“私はアジア人だから差別されている”という被害者意識があり、へこんでいました。自分の置かれた環境でどれだけ工夫できるか、そんな前向きな気持ちが欠けていたと。仕事上でも意識の切り替えが少しずつできるようになりましたね」