履歴書を送り続けて、憧れのブランドに。数字で返ってくる評価も励みのひとつ

まっすぐ相手を見つめながら迷いなく簡潔に話す。エンマカイサ・キルヴェスさんの印象は、マリメッコ創業者アルミ・ラティア氏の面影に重なる。“強い女性の代表格”と認知されるラティア氏が1951年に生み出したこのテキスタイルブランドは、国内外の自立した女性たちに愛され続けてきた。

エンマカイサさんにとっても憧れのブランドであり、大学院在学中からずっと履歴書をマリメッコに送り続けていた。フィンランドではポストの有無にかかわらず、常時履歴書を受け付けている企業がほとんどだ。アシスタントデザイナーのポストが空いた時点でヘッドデザイナーから連絡があり、面接に行き採用。

自身でデザインしたシャツがお気に入り。エンマカイサ・キルヴェスさん

現在はファッション部門のデザインマネジャーとして活躍中。仕事のやりがいを感じるのは「洋服をデザインして形になった瞬間」だ。目の前の布地に自分の能力を惜しみなく注ぎ込み、形になっていく――。その工程がたまらなく好きなのだ。

「販売の数字として、世界中から仕事への評価が返ってくることも充足感につながります」と言い切る表情には、大好きなファッションの世界で仕事に打ち込む喜びがあふれる。国を代表するブランドを支える仕事となれば、プレッシャーも相当ではないだろうか?

「世の中も自分も毎日変化しているので、その時々でベストな対応をしていればいいと思っています」

家庭では2歳になる息子や夫との日常をエンジョイする毎日。時間さえあれば、ボール遊びに夢中になっている息子と遊ぶことが楽しくて仕方がない。

マリメッコでは創業以来、家族との時間を大切にする働き方を推進している。前述のラティア氏の提案で、社員が早朝から働き、早く退社できるように、本社の社員食堂では毎日朝食が無料で提供されている。

「8時間きっちり働いて夕方には退社します。これから家庭を持つ部下たちの見本になりたいのです。家族との生活を充実させてこそ仕事の成果が高まるのですから」

今後エンマカイサさんがファッションデザインを通じて発信する女性像に、ますます期待が高まる。

(写真左)スタッフとのミーティングも重要な仕事。(右)本社ロビーには最新のファブリックが並ぶ。
▼1日のスケジュール
6:30 起床後、身支度。コーヒー、スムージー、クロワッサンで朝食。子どもの送り迎えは夫が担当。
8:00 出社。デスクワーク、チーム状況の確認、ミーティング、フィッティングなど。
17:00 帰宅。夕食後、子どもと遊ぶ。
20:00 子どもを寝かしつけ。その後は友達と会ったり、インスタをしたりする自分の時間に。
22:00 就寝。
▼my favorite
●美容と健康:朝はさゆにレモンの搾り汁とミネラル塩を少し入れて飲む。水に塩を溶かしたものをスキンケアに使うことも
エンマカイサ・キルヴェス(Emmakaisa Kirves)
テキスタイルブランド・デザインマネジャー
1980年、ハルムスタッド生まれ。Lahti Institute of Designを卒業後、「ハンナサレン」でデザインを担当。アアルト大学で修士号を取得。2011年マリメッコに入社し、現職。