イケアやH&Mなど、日本でもおなじみの企業発祥の国。「家族との時間が第一」という考え方が根づいています。バリバリ働くキャリアウーマンもが実践する、ワーク・ライフ・バランスを拝見。
▼スウェーデン編

ロンドンで10年間の武者修行後、家族との生活を考えて故郷に戻る

スウェーデンで最も難関とされる経済大学でMBAを取得したカーリン・ベリエルンドさん。就職は引く手あまただったが、新しい街で視野を広げるため、イギリスへ移住。ヨーロッパの金融の中心地・ロンドンで投資アドバイザーとしてキャリアの一歩を踏み出した。その後、富裕層の資産運用を専門とする企業に転職し、幅広い経験を重ねる。

モットーは常にハッピーでいること。辛いときこそ心を幸せモードにしている。カーリン・ベリエルンドさん

「ロンドンで仕事を始めて10年が経った頃でした。同じスウェーデン人のパートナーと将来を相談したところ、そろそろストックホルムに戻る時期だと判断。ヘッドハンター経由で転職先を探しました」

まもなくレジャー向け家電製品などの製造販売を行う「ドメティック」のM&A(企業の合併・買収)責任者のオファーを受けた。

「わが社はM&Aを経営戦略の1つに挙げている成長企業。多くの企業と取引ができ、ビジネスの拡大にも貢献できると思い転職しました」

M&Aは利益をもたらす可能性の高い相手を探し出すリサーチから始まる。まずはその組織の経済的な背景やビジネスの可能性、どのような相乗効果をもたらすかなどをリサーチ。たび重なる交渉を経て合併や買収の同意に至るまで、最低でも数カ月はかかる大型プロジェクトだ。

「醍醐味(だいごみ)といえば、ゴールに到達したときの達成感。双方の責任者が集まり握手をし、合意書類にサインする瞬間は、とても感慨深いです」

今までで最大の企業買収プロジェクトをまとめたときの記念の「墓石」。

そしてこの達成感をひときわ高めるものが、業界用語で「墓石」と呼ばれるクリスタルでできた特別な置物だ。会社の売買は、大きな金額が動く金融業界でも注目されるイベント。どの取引もアドバイザーを務める投資銀行や証券会社が業務をサポートする。アドバイザーは契約が整うと、取引成功の記念に立派な墓石を作成して関係者に配る。

なぜ墓石なのか? 新聞に掲載されるM&Aの告知や株式の新規公開の広告のデザインが、欧米の墓石のデザインと似ているので、そう呼ばれるようになった。美しいパッケージに入って届けられる墓石は、担当者のオフィスを飾り、スポーツ選手にとってのトロフィーのように次の仕事へのモチベーションになるのだ。