2018年の幸福度ランキングで1位を獲得した“世界で最も住みやすい国” 。社会の制度を上手に利用しつつ、仕事にも子育てにも全力で取り組む女性たちの日常を追いました。
▼フィンランド編

働く意味を自問し続け地元を盛り上げる“天職”に

大学卒業後、ヘイニ・ヤルヴィネンさんが就職したのは、海外輸出を支える企業。夢中で仕事に打ち込んだ14年間を「成果主義の中で認められる充実感があった半面、時間に追われて何のために働いているのかが見えなくなっていました」と振り返る。その後転職したのが、ヘルシンキ市が出資する公的企業ヘルシンキ・マーケティング社。プロジェクト・マネジャーとして広報事業に従事し、ヘルシンキ市の教育制度・医療システム・起業を促す投資支援サポートなど、街の魅力を発信するのが主な仕事だ。

会社近くの公園でリフレッシュする。ヘイニ・ヤルヴィネンさん

ヘイニさんにとって転機となったのは、転職前の専業主婦だった1年間。「何のために仕事をするのか」と自問するなかで今の仕事に出合う。

「成果主義一辺倒ではなく、社会的に意味のある仕事をしたいと強く思うようになっていました。さらに、ヘルシンキのさまざまな人たちとつながることにも魅力を感じて、今の仕事を選んだのです」

ヘイニさんの言う“つながり”は実際にヘルシンキに変革を起こしつつある。たとえば、会社が主催する国際的な起業家・投資家のためのイベント「SLUSH」。世界各国から若い起業希望者が集い、投資家たちに対して新しいアイデアや技術をプレゼンする。そのプレゼン手法も、クラブイベントのようなアップテンポなトークで行うのが斬新だ。

「このようなヘルシンキのパワーが、新たな魅力となっていることに、住民として誇りを感じます」

通常は16時頃に退社できるので以前より子育てに注力できるようになった。家の裏からそのまま森に行けるので、夏はおやつを持って散歩し、冬はクロスカントリースキーを家族で楽しむ。ボーイスカウト、柔道、クライミング、ダンス、ピアノなど、子どもたちの習い事も充実している。公私ともにバランスが取れ、ヘイニさんの日常はますます輝く。

(写真左)社内の仕事はチーム制。欠勤したらお互いに仕事を分担するのが鉄則。(右)愛読書は子どもの読み聞かせにも。
▼1日のスケジュール
6:45 起床後、身支度をする。コーヒーとライ麦パンで朝食。
8:30 出社。
16:00 昼食なしで7.5時間労働。
17:00 買い物などを済ませて帰宅。夕食の準備を夫と交代でする。
18:00 曜日により子どもの習い事の送り迎え。その後、週に2回ほど近所の友人とジョギング。
20:00 子どもの宿題確認、子どもの翌日の支度を手伝う。
21:00 自分の明日の支度をする。
22:00 就寝。睡眠は8時間以上をキープ。
▼my favorite
●好きな言葉:「今日の自分が自分史上最高の自分」
●愛読書:「ムーミン」シリーズを含む絵本全般
ヘイニ・ヤルヴィネン(Heini Järvinen)
ヘルシンキ公的企業プロジェクト・マネジャー
1975年、コトカ生まれ。ヘルシンキ商科大学(現・アアルト大学)でMBA取得。国家出資の海外輸出促進企業のフィンプロでプロジェクト・アシスタントを担当。2016年より現職。