世の書物には2種類ある。1つは純粋に楽しんで読む本、もう1つは何かの役に立てようと読む本である。本書は日常のなかにある美しい一瞬を写したカラー写真集で、両方を満たす本でもある。対象はミルク、ダイコン、液晶テレビ、CD、ライターといったごく身近なものばかりだが、ありふれた物質も科学のレンズを通すと意外におもしろい姿が現れるのである。

丸く膨らんだシャボン玉の表面をよく見ると、鮮やかな色の世界が宇宙を漂う惑星のように広がっている。また、蚊取り線香の煙の渦うずには、空気の流れが醸かもし出す美しい造形美が存在する。こんなことは教えてもらわなければ一生知る機会がないのではないか。