地域の人が参加することを文科省は奨励している

理由は大きく二つあります。

一つ目の理由は、前にも言ったように、「みんなで同じことを、同じペースで」の学びが、今や時代に合わなくなっていることに、多くの人が気づいていることです。

カリキュラムは、今後「探究(プロジェクト)」が中心に確実になっていきます。とすれば、その探究が異年齢チームで行われることも十分ありうるでしょう。小学生と中学生と高齢者による、地域の課題解決プロジェクトチームが組まれることだってあるかもしれません。学校は、今よりもっともっと、多様性を自然に包摂できる空間になっていけるはずなのです。

先述したように、学習指導要領は「社会に開かれた教育課程」を謳っています。地域の人たちが学校教育にもっと参画することを、文科省は大いに奨励しているのです。

学校の中に、もっと多様性や流動性を。同質性の高い息苦しい空間を、もっと風通しのいいものにしていきたいものだと思います。

「1年生と2年生が一緒に学ぶ」学級が増えている

学校が“ごちゃまぜのラーニングセンター”になっていくだろうもう一つの理由は、特に地方で進んでいる、少子化や過疎化に伴う小規模校や学校統廃合の問題です。今、学校統廃合は加速度的に進んでおり、中には何十キロものバス通学をしている子どもたちもいます。現代の学校教育における、最大の問題の一つです。

でもわたしは、まさにこの現状こそが、学校を否応なく“ごちゃまぜのラーニングセンター”にしていく大きなきっかけになるのではないかと考えています。

小規模校について言えば、今、全国で複式学級が急速に増加しています。1年生と2年生など、異年齢からなる学級のことです。

でもこれは、見方を変えれば、異年齢という多様性の“ごちゃまぜ”がすでに実現した環境だと言うこともできます。

複式学級では、同じ教室内で、異学年の子どもたちを二つに分けて一斉授業をする光景も時折見られます。でもそれはあまりにもったいないことです。ぜひ、これをチャンスに、学びの「個別化」と「協同化」の融合へと舵を切っていきたいものだと思います。異年齢という多様性を活かした、“ゆるやかな協同性”に支えられた個の学びを実現するのです(「個別化」と「協同化」の融合、より正確には、「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」とわたしが呼んでいるこれからの学びのあり方については、拙著『教育の力』および『「学校」をつくり直す』をご参照いただければ幸いです)。

そして当然、「プロジェクト」は、時と場合に応じて異年齢からなるプロジェクトチームによって進めることが可能です。小規模校は、多様性が自然な形で混ざり合う条件がすでに整っているのです。