NGワード3「○○さんなら大丈夫、できるよ!」

昨今、個人競技の指導者がこのような言葉でプレーヤーを鼓舞する、勇気づける、といったシーンを見るようになった。メディアでも選手に寄り添ってパフォーマンスをあげている「良いコーチ」という一定の評価が下されているようだ。これは我々のコンサルティング現場でも目にするシーンだ。

部下の意欲向上を常に熟慮し、口ぐせは「部下の気持ちに火をつけろ」だったりする。人の意識にモチベーションが存在することは否定しないが、外側から意欲をあげにいく手法は、「鼓舞されないとやらない」「勇気づけないとできない」部下になってしまうデメリットがある。フルコミッションなどの給与体系下では機能する可能性があるが、部下の意識が、成果を出すと報酬が発生するという基本的な順序が正しく認識できなくなるので要注意。

また、何によって意欲が向上するかは、その部下個々の価値観に依存する。顧客評価の人もいれば上司の称賛という人もいて、単純にお金の人もいれば、細かい努力を見てほしい、という人もいるだろう。個人競技では成立するかもしれないが、集団を管理していく上で、一人ひとりの価値観に合わせたマネジメントを展開するというのは、時間的にも労力的にも限界があることを理解しよう。

NGワード4「○○って、社長が褒めていたよ」

部下の動きをよくするために自分以外の権威を利用することはないだろうか。「社長が褒めていたよ」については、より権威のある人間からの称賛を部下の意欲を高めていくために使用している。これは社長に権威があればあるほど効果的だ。また、逆に部下の言動を修正したい、引き締めたい場合に「社長に言っておくね」と軽い告げ口というか脅しというか、そういう狙いで上位者を持ち出すことがあるかもしれない。これも、社長に言われてしまってはまずいという感覚が生じるため、その瞬間の管理統制には効果があると考えられる。

瞬間的効果を経験し“味をしめてしまう”のがこの手法の特徴だが、繰り返しによってあなたのマネジメント力をそいでいく。自分より上位者の権威を用いてマネジメントしているのだから、徐々に部下の意識はその上位者に向き、あなたとの上下関係は意識上希薄化していく。最後には上司を用いないと指示が通らないという展開になってしまうのだ。