2割の人は勤務時間を意識していない

どうすれば長時間労働を変えられるのでしょうか。それには4つの方法があります。

まず、第一に、経営者が経営課題としてきちんと捉えることです。長時間労働をやめないと良い人材が採れない、あるいは新卒が採れないと位置づけ、それをブラさないことが重要です。安倍政権も「働き方改革」と言っているから、あるいは長時間労働の是正は人事の課題になっているからという打ち出し方では経営者の本気度が社内に伝わりません。

2つ目は、基本の就業時間と残業時間の境をはっきりと付けることです。調査してみてわかったのは、2割くらいの人は自分の勤務時間を意識せずに働いていることです。無自覚のまま長時間労働になっていると考えられます。

具体的な方法には、PCを強制的にシャットダウンさせる、オフィスの照明を消すなど、様々あるでしょう。いずれにしても、ここからは残業であると意識させる必要があります。境界線を明確にし、残業させない、あるいはきちんと残業と認めて残業代を支払うことになるので、かなり痛みを伴います。この方法を私は「外科手術」と呼んでいます。

事業や業務のムダに気づかない上司が3割

3つ目は人で言えば「体力増進」に当たる方法です。ポイントは上司のマネジメント能力の向上です。

現場で働く人たちには、この事業や業務は「生産性が悪い」「やめたほうがいい」と思っています。ところが、私たちの調査では、それに気づかない上司が3割いました。上司がムダな事業や業務に気づくためには、自由闊達なコミュケーションが保証されていて、ムダなものを率直に指摘し合えるカルチャーが必要です。そうした職場カルチャーを作り上げられる上司力がカギになります。

4つ目はじわじわと効果が出る「漢方治療」です。しかし、これがもっとも本質的な解決策です。職場でどの仕事が必要なのか、不要なのかをきちんとデータに基づいて判断し、仕事のリストラを行います。この仕事は今まで2人で担当していたけど、1人で十分対応できるというケースや、この議事録はここまで細かく記録する必要はないといったケースなど、見直せるところはたくさんあると思います。そして、選択的に生産性の高い仕事に資源を集中するのです。