抜群に高いネット広告の利益率

サイバーのうまみとは何かを説明する前に、インターネット広告事業について再確認してみよう。インターネット広告事業は、ゲーム事業と比べると収益力が低いのは前述したとおりである。しかし、同業他社と比べると興味深い結果が浮かび上がってくる。

まず、広告業界の同業他社と比較をしてみよう。なんと業界最大手の電通の利益率はたったの2.1%、第2位の博報堂も3.9%しかない(図表5参照)。つまり、サイバーの広告事業は、広告業界の巨人を凌駕する驚異的な収益力なのである。

図表=各社の決算短信を基に川口氏作成

しかし広告業界といっても、電通のようなマスメディアを相手にする大手広告代理店と、サイバーのようなインターネット専業の広告代理店とでは、収益構造がそもそも異なる可能性がある。そこで、オプト、セプテーニなどのインターネット専業の広告代理店の利益率を見てみると、わずか5%程度(図表6参照)。サイバーはインターネット専業の広告代理店と比べても、抜群に高い利益率だと分かる。

図表=各社の決算短信を基に川口氏作成

では、なぜサイバーだけが突出して高い利益率を誇っているのか。それは、自社メディアの存在である。

前述のとおり、広告代理店は、広告枠をテレビや雑誌など(メディア)から仕入れ、広告を出したいと考える企業(広告主)に販売するという、卸売業のようなビジネスモデルなので、必然的に利益率は低くなる。

「アメブロ」と同じ構造

しかし、サイバーはアメブロというメディアを自社で運営しているため、本来メディア側の取り分となるマージンも自社のものになる(図表7参照)。しかも、数多あるブログサービスのなかでも多数の芸能人や著名人が利用するアメブロは閲覧数が多く、広告価値が高い。

このように製品やサービスを市場に供給するサプライチェーンに沿って、付加価値の源泉となる工程を自社に取り込むことを「垂直統合」という。

アパレル業界では「H&M」や「ユニクロ」などが、企画から生産、販売までの工程を垂直統合して躍進したことが有名だが、これと同様のことを広告業界でやってのけたのがサイバーだ。だからこそ、高いマージンが取れているのである。