国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の大地震。激しい揺れの後、最高10m以上の津波が押し寄せた。災害から身を守るためには、どうすればいいのか。第一には「逃げるが勝ち」という心構えを持つことだ。
首都直下地震が起きれば3万人以上が死亡の恐れ
こうした津波が首都圏を襲うこともあるのだろうか。河田教授は「首都圏に関しては今回のような心配はない」と話す。
「東京湾は浅いため、動く海水量が少ない。津波の高さは1メートル程度にとどまる。湾岸には3メートルの高潮対策が施されており、津波被害の恐れはない」
その一方で、首都直下地震が起きる可能性は依然として残されている。内閣府の中央防災会議は、今後30年以内に70%の確率でM7クラスの首都直下地震が起きると予想している。
関西大学・河田惠昭教授は、首都圏で直下地震(M7.3の東京湾北部地震を想定)が起きた場合の被害についてシミュレーションを行っている。それによれば、首都圏被災地人口2400万人超の0.1%にあたる3万人以上に死亡の危険があり、避難者数は700万人、避難所生活者は460万人、疎開者数は250万人に上る。
さらに河田教授が警鐘を鳴らすのが「複合災害」の危険性だ。複合災害とは震災と浸水などがからみあって発生する事態をさす。江戸時代には、1855年の安政地震が起きてから、翌56年に安政暴風雨が発生。被害が拡大した。利根川も荒川も現行の治水施設群では、200年に一度の確率の豪雨には耐えられない。地震で被災していればさらに危険性は高まる。河田教授は、「首都圏への一極集中が進んでいる。今後、市街地で氾濫が起これば、間違いなく未曾有の被害が発生する」という。
「首都壊滅」の事態となれば、影響は甚大だ。災害心理学を研究している新潟青陵大学の碓井真史教授は、「復興の拠点の有無が重要だ」という。
「阪神・淡路大震災では、大阪という拠点が近隣にあったため、復興がスムーズに進んだ。今回の大震災では、東北の拠点となる仙台が被災しており、影響が懸念される。もし首都圏が被災することがあれば、苛立ちや不安は全国に波及する」