※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです
院長のセクハラや、パワハラで辞めるケースも
今どき常に求人募集している企業は、成長の途上というより「ブラック企業」を連想させる。これを病院に置き換えた場合はどうだろう。医師・看護師や他の医療従事者、事務職員が頻繁に入れ替わる病院とそうでない病院とでは、患者へのサービス内容に差があるのだろうか。
まず、病院はどんなタイミングで求人を出すのだろうか。医師専任キャリアコンサルタントの中村正志氏が言う。
「大きな病院は、創立30年ぐらいで大幅なリニューアルをすることが多いんです。特に17年、16年は多かった気がします。ちょうど建て替えの時期に、経営陣を一掃したり、公立から民間に移管したりして体制が変わる。そういうときの募集は成長の証しでもあり、悪い印象はありません」
一方、日本の医療を研究する会代表理事で、自らもクリニックを運営する川田諭氏は、クリニックの場合、開業して1年ぐらいで、看護師や医療事務スタッフが一挙に辞めてしまうケースがあると言う。
「クリニックを開業する医師は、勤めていた大学病院や総合病院から独立するケースが多い。企業に置き換えると大企業の社員が、いきなり中小企業の社長になるわけです」
それまで周りのスタッフがやってくれていたことを、院長はすべて自分でやらなければならない。不慣れな仕事で、ストレスがかなり溜まる。
「スタッフが我慢を重ねたすえに、1年経って『もうダメだ』と辞めていくケースは多い。大きな病院にいたときに思い描いていた理想と現実のギャップも大きい」(川田氏)
これは、大病院の現場で勤務医として精力的に働いていた医師に、特に多く見られる傾向だという。最初の1年は、医師も経験や勘に頼って頑張れるのだが、それまで周囲のサポートでやってきた医師が、たった1年で厳しい“経営者”に変わってしまうのだ。オープニングから頑張ってきたスタッフが、そこですれ違いを感じる。転職先には困らない資格を持つ人ばかりだから、すんなり辞めてしまう。
「多くの医師は経営について学んだことがありません。医師のマネジメント力の低さが原因です」(中村氏)