仙台は再開発地域にAIが軍配

30年度に開業予定の北海道新幹線への期待から、ここ数年、札幌駅周辺を中心に地価上昇が続く。しかし、下落が上昇を大幅に上回った理由は「AIが上がりすぎと判断し、逆に下落を予測したのでは」(櫻井氏)。上昇率1位は古くからの高級住宅地「円山公園」。都心へのアクセスもよく、北海道神宮など自然も身近に感じられるエリアだ。上昇率2位の「南郷13丁目」も従来の閑静な住宅街で、スーパー・コンビニ・病院が充実。

仙台市は「東日本大震災後、都心を中心にずっと上がり続けた結果、高止まりの状況」(同)。今回の予測結果では唯一、上昇が上回った。ただし、AIが上昇と判断したのは都心ではなく、少し離れた場所。上昇率1位の「富沢」は、市内最大規模の再開発地区「あすと長町」と同じ南北線で、同様に区画整理事業が進む今注目のエリアだ。一方、上昇率2位の「北仙台」は富沢とは逆に仙台駅の北側。仙山線と南北線が交差する交通の要で、こちらも再開発事業が進められている。

広島の狙い目は都心から離れた町

広島市は値下がりが大勢。「もともとの中心市街地(紙屋町・八丁堀地区)と、再開発が進んで高層ビルが立つ広島駅周辺などの都心以外は人口流出の傾向が強まるだろう」(井出氏)というのが、その要因と考えられる。そうした中で例外なのが、都心から離れているのに上昇率1、2位となった「緑井」と「大町」。市街地再開発事業によって商業施設と自然が共存する街に生まれ変わった緑井、広島高速交通(アストラムライン)、JR、バスが集結する大町は、子育て世代に人気が高い。

福岡市は「九州新幹線の開通、インバウンド効果などで活気があり、ここ数年で土地価格も上昇したが、それは天神や博多への通勤圏が中心」(櫻井氏)。上昇率1位と2位は、地下鉄1号線(空港線)の「大濠公園」と「西新」。「この辺りは博多に通勤するのに絶好のエリア。隣の赤坂とともに、東京でいえば世田谷のような高級住宅地です。億ションやタワーマンションが売りに出たりするのも大濠公園や赤坂です」(井出氏)。

櫻井幸雄
住宅ジャーナリスト
「週刊住宅情報」記者を経て独立。年間200件以上の物件取材を行い、首都圏、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国の住宅事情に精通する。
 

井出 武
東京カンテイ上席主任研究員
1989年、マンションの業界団体に入社して不動産市場の調査・分析等に従事。2001年、東京カンテイ入社。市場の調査・研究等を行っている。