「電子チケット」の落とし穴
また、業務に支障が出た人や企業も多かっただろう。宅配サービスの佐川急便は、ドライバーの携帯電話や専用端末がソフトバンク回線だったため、集荷の依頼や再配達情報がドライバーへ届かなくなった。
格安航空会社ジェットスター・ジャパンも影響を受けた。ソフトバンク回線の携帯端末を使って搭乗券を確認していたため、通信障害の間は照合を手作業で行った。これにより、一部の空港で遅延が発生した。また、全日本空輸(ANA)、伊藤園、PayPayでも業務に支障が出たという。
東京ディズニーリゾートでは、電子チケットをスマホのアプリで表示できない人がいたため、本人確認によって入場する措置を取った。同じく電子チケット関連では、当日開催されたロックバンド「GLAY」や「SEKAI NO OWARI」のコンサートにも影響し、電子チケットをネットがつながる場所でスクリーンショットを撮るよう公式アカウントが呼びかけるなど、各所が対応に追われた。
通信障害に見舞われたときの自衛策は
これほど大規模な通信障害はおそらく過去に例がなく、総務省は再発防止などの徹底を求めて行政指導を行う方針だという。こうした事態がまた起きることは考えたくないが、もし通信障害に巻き込まれたらどうしたらいいか、備えておくことは大切だろう。そこで、個人でできる対策を考えてみた。
・連絡先を複数確保しておく
LINEやFacebookなどSNSは一切やらないというユーザーもいる。そういう人は、キャリアの電話番号とSMSしか連絡手段がないので、通信障害が起きると連絡がつかなくなってしまう。対策はある。アカウントを作らなくても、やりとりできるアプリがあるのだ。
大手キャリア3社が提供している「+メッセージ」というアプリがある。これは電話番号をベースにつながるサービスで、LINEなどと同じようにインターネット経由でメッセージの送受信ができる。Wi‐Fiなどでネットにつながれば、電話回線がつながらなくてもやりとりができる。
LINEなどと違うのは、アカウントの作成が不要で、アプリをダウンロードするだけですぐに始められる点だ。知らない人とSNSでつながりたくないというユーザーにもおすすめできる。ただし、やりとりをしたい相手がアプリをダウンロードしている必要がある。通信障害に備えて、あらかじめ準備しておくといいだろう。
・フリーWi‐Fiの場所をチェックしておく
通信回線が遮断されても、Wi‐Fiに接続できればインターネットを利用するサービスは使うことができる。LINEの無料通話などのIP電話は使えるし、メールや経路探索も利用できる。通勤経路や近所にフリーWi‐Fiを使える場所がないか、普段からチェックしておくとよい。例えば、東京メトロなどの交通サービス、自治体、コンビニ、カフェなどにフリーWi‐Fiは用意されている。利用するには、メールアドレスやSNSでのアカウント登録が必要な場合もあるので、あらかじめ取得しておいてもいいだろう。
また、Wi‐Fiによっては暗号化されていない場合もあり、通信内容が盗み見られる可能性がある。重要なやりとりには、暗号化されているWi‐Fiを使うようにしたい。暗号化されているかどうかは、Wi‐Fiのネットワーク名に鍵マークが付いているかで判別できる。