日本の教育費の公的支出割合はOECD加盟国で最低レベルだ。一方、私的支出はどうだろうか。教育を重視するシンガポールでは、教育費の公的支出割合が高いだけでなく、個人でも教育にだけは惜しみなく投資するという。シンガポール在住のファイナンシャルプランナー・花輪陽子氏は「アジアの人たちと日本人の意識には、かなりの差がある」と指摘する――。

一流大学に行かせるため自宅を売却する家庭も

シンガポールで生活をしていると、教育に対するお金のかけ方には、目を見張るものがあります。富裕層は当然ですが、一般庶民も夫婦で働いて家庭教師をつけるなど、教育費だけは惜しみなく投資をするというのがシンガポール流なのです。なかには、子供を欧米の大学に行かせるために、自宅を売ってでも行かせる家庭もあるほどです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ferrantraite)

その結果も出ているようです。知人の友達の家庭では、子供に教育費をかけた結果、仕事で成功して、親のために売却した家を買い戻したそうです。こうしたエピソードが伝わってくるほど、「教育費=投資」という考え方が強いのです。

さまざまな調査で指摘されているとおり、親の収入と子どもの学歴の因果関係ははっきりしており、「富の格差」が「学力の格差」にもつながっています。シンガポールにある名門インターナショナルスクールの場合、卒業生の多くが、米国の「アイビーリーグ」や英国の「オックスブリッジ」に進学しています。

国家予算の4割を国防と教育にかけるシンガポール

シンガポールは「唯一の武器は賢い頭脳」と自負しているほど教育費の重要性を理解している国で、国家予算の約40%は「国防」と「教育」です。それに対して、日本の国家予算の75%は「社会保障(年金、医療、介護など社会保障給付)」、「地方交付税交付金(地方自治体の収入の格差を少なくするために交付される資金)」「国債費(借金返済)」に当てられており、削ることが難しい支出となっています。国防費と教育費に関してはそれぞれ5%程度です。つまり国が教育費などの政策的な支出に大きな予算をかけられない状況になっており、各家庭が教育費を捻出するしかない状況になっているのです。