最近では、音楽コミュニティアプリ「nana」で、「演技力じゃがりこ面接」というものが流行した。「うれしくて」「悲しくて」といったさまざまなシチュエーションに合わせて「じゃがりこ」という単語を話すというものだ。
またカメラアプリ「SNOW」では、自撮りにクマのフィルターをかけ、音楽に合わせて動く「あっちのクマもこっちのクマも」という動画が流行した。
いずれの例も、なにか新しい「型」がウケると、ユーザーたちが次々とまったく同じ「型」を真似するという特徴がある。若者たちはとにかく「みんなと同じこと」をしたいのだ。
そうした状況で、TikTokは人気を集めやすい環境が整っていた。投稿のハードルが非常に低いのだ。これまでの動画投稿サービスで人気だったのは、「踊ってみた」といわれる複雑なダンスを真似するものだった。だがTikTokでは上半身だけ、しかも極端にシンプルな振り付けでも見映えがする。
たとえば、「雨効果」のスタンプをオンにすると、画面に雨が振り、手を開くと雨粒が止まって見える。これを利用した、手のひらを左右交互に開いて突き出すだけというあまりにシンプルな振り付けの動画が多数投稿されている。
オリジナリティは求められず、流行している振り付けをそのまま使えばいいので、ネタにも事欠かない。撮影速度はスローや倍速などに変えられるので、動きについていけないこともない。
「35年前の曲」が突然ランキング1位に
TikTokで流行中の音楽は独特だ。今年の春から夏にかけて、倖田來未さんの「め組のひと」に合わせて踊る動画が流行した。倖田さんのカバーが発売されたのは2010年、ラッツ&スターが原曲を発売したのは35年前の1983年だ。「曲が新しいか、古いか」という点はほとんど関係がない。ユーザーにとって重要なのは、15秒という単位で使いやすいかどうかなのだ。