「技術に失敗はない」と、後輩たちの心を支える

30人以上の部下をもつ彼女にとって、大きな課題の1つは次世代のエンジニアを育成することだ。

Essential Item●革の小物入れ(右)にスマホや名刺入れ(左)などを収納。指示棒(中)は印刷物の色味チェック用。

「私が研究していた時代にくらべると、写真印刷の需要は激減しました。スマートフォンで写真を撮っても、印刷はしないという人も多いでしょう。一方でインクジェットプリントの技術は一段も二段も高いレベルが求められています。やったことがすぐに成果につながる時代ではもうない。そのなかで、いかに若い研究者たちのモチベーションを喚起すればいいかには、いつも気を配っていますね」

たとえば、技術上の目標を明確に定め、「このレベルの技術が開発できれば、こうした商品を展開できる」と具体的に示すこと。また、目標に届かなかったときも、「技術には失敗というものがなく、その蓄積が次につながる」と、後輩たちに繰り返し語ってきた。

「マネジメントする立場になってからも、『自分で実験したい』と思うことがたまにあります。ただ、現場を部下たちに任せ、成長させていくのも私の役割。そうするうちに、これまでの仕事とは違った面白さ、やりがいを感じるようになっていきました。チャンスは誰にでも与えられるわけではありません。声がかかったら、たとえ不安でも一歩前に踏み出してみて、と言いたいですね」

▼金谷さんの1日のスケジュール
(6:00~7:30)起床、家事、身支度
(7:30~8:15)通勤(自動車)
(8:30~9:30)始業、メールチェック
(9:30~10:00)部課長朝会
(10:00~12:00)資料作成、管理業務など
(12:00~13:00)昼食
(13:00~18:00)社内打ち合わせ
(18:00~18:45)退社、帰宅(自動車)

(19:00~20:30)夕飯、家事
(20:30~0:30)入浴、テレビ、読書など
(0:30)就寝

撮影=伊藤菜々子