司馬遼太郎が愛した普通の日本人

司馬遼太郎記念館があるのは近鉄線の河内小阪駅と八戸ノ里(やえのさと)駅の中間で、大阪市内からは電車で30分ほどだ。記念館へ向かう道の途中には銭湯があり、手ぬぐいと洗面器を携えた人とすれ違うこともある。大阪のおっちゃんやおばはんが暮らす庶民的な町なのだ。記念館は司馬邸の敷地内と隣接地で構成され、かつて彼が執筆していた書斎も見ることができる。開館は2001年。毎年、3万人の入場者がある。

館内で見るべきものは6万冊と言われる蔵書のうち2万冊を納めた高さ11メートルの大書架だろう。彼は蔵書のほぼすべてを読んだという。何しろ6万冊である。1年間に600冊を読んだとしても、6万冊を読了するには100年かかる。司馬遼太郎は書いた作品も多いが、読んだ本も多い人なのだ。

(岡倉禎志=撮影)