SNSでは被爆者代表と寄り添う写真
ところが、である。
同日、首相官邸のフェイスブック公式アカウントには「本年もまた8月6日を迎え、広島を訪れ、平和記念公園での式典に参列しました。原子爆弾の投下により犠牲となられた数多くの方々の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げるとともに、広島の悲劇を決して繰り返してはならないとの決意を新たにいたしました。『ネバーギブアップで頑張っていく』20歳の時、広島で被爆した坪井さんの言葉です。唯一の戦争被爆国として、我が国は、核兵器国と非核兵器国双方の橋渡しに粘り強く努めながら、『核兵器のない世界』の実現に向けて、一層の努力を積み重ねてまいります」という書き込みとともに広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長と手を取り合う写真を掲載している。ツイッターにも同じ写真をアップした。
この書き込みと写真を見れば、安倍首相と被爆者の間には絶対的な信頼関係があるように見える。実際、坪井氏は発言の後半、安倍首相に対し「たいしたもんですよ。身体がよく続くなあと。ますますこれからもがんばっていきたい」とエールを送る一幕はあった。
ただし、広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長のように「これまで、この席で安倍内閣の集団的自衛権の容認、憲法改悪の主張の抗議し撤回を求めました。残念ながら、今年も政府の態度は『安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから』という平和記念公園の碑文の誓いにそむくものだ」と政府への不信を隠さない出席者もいた。
「よくもこのようなシーンを切り取ったものだ」
共産党の小池晃書記長は「坪井直さんが『ネバーギブアップで頑張っていく』とおっしゃるのは、核兵器禁止条約に日本が署名、批准し核兵器の廃絶をその目で見届けるまでネバーギブアップで頑張るということ。被爆国の首相でありながらそれに反対する安倍首相への痛烈な一言。それを自らへのエールのように描く。あまりに卑劣」とツイート。坪井氏の発言を都合よく「つまみ食い」したと断じた。
安倍首相の広島入りを取材した現地の記者の間では「全体的には首相と被爆者たちのギスギスしたシーンが目立った1日だったのに」「ワンシーンをよくも切り取ったものだ」という驚き混じりのささやきも漏れたという。