「罰則付き防止策導入の意義は大きい」というが……

リベラル派の朝日社説に対し、保守の本道をいく読売新聞の社説はどうだろうか。

7月19日付の読売社説は「他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の規制強化は、世界的な流れだ。2020年東京五輪へ向けて、対策を着実に前進させたい」と書き出す。まずまずの書きぶりである。

読売社説は改正法を解説していく。

「学校や病院、行政機関は敷地内を禁煙とする。屋内は全面禁煙で、屋外の喫煙所設置は認める。飲食店やオフィスは屋内禁煙が原則だが、喫煙専用室を設置できる」
「喫煙可能部分には、従業員を含む20歳未満の立ち入りを禁じる。度重なる違反には罰則を科す」
「現行の受動喫煙対策は、努力義務にとどまる。罰則付きの防止策を導入する意義は大きい」

意義はあるかもしれないが、前述したように骨抜き法であることに変わりはない。読売社説にはそこを的確に批判してほしかった。

朝日と読売の主張が一致するところに生ぬるさがある

さらに読売社説は「受動喫煙による健康被害は、各種の調査研究で明らかになっている」と指摘し、「世界保健機関(WHO)は、屋内全面禁煙だけが有効な対策だとして、喫煙室設置にも否定的だ。飲食店やバーを含めて屋内禁煙を義務化したのは55か国に上る」と解説する。

そのうえでこう主張する。

「国際標準から見れば、改正法の内容は見劣りする。飲食業界は禁煙による客離れを懸念するが、親子連れなど新たな客層の来店が増えた例もある。健康被害防止への理解を広めつつ、段階的に屋内全面禁煙の範囲を拡大したい」

読売社説の主張は一歩一歩、国際基準に近づくことを求めているが、「小さな一歩から前へ」という見出しを掲げ、「小さな一歩ではあるが、これを足場に次のステップに進むしかない」と書く朝日社説と同じ主張である。

左の朝日も右の読売も受動喫煙対策に関しては、主張が同じところがおもしろい。ただどちらも沙鴎一歩には生ぬるいと思えるのだが、いかがだろうか。

なぜ朝日と読売の主張が似通うのか。新聞社の記者も含めてたばこの害に鈍感な輩が多いからだろう。その結果、日本のたばこ対策が遅れてしまっているわけだ。

(写真=時事通信フォト)
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