怒りの頂点のあと、脱力できる『怒りの日』

消えぬなら味わってしまえホトトギス、いや怒りの日。曲名もずばり、『怒りの日』である。この曲は、ヴェルディ作曲のレクイエムの中の一曲で、その荒々しい旋律は、多くの映画や劇伴にも使用されている。楽曲名を知らなくても、音楽は聞いたことがあるという人が多い。

レクイエムなので、もちろんそれは宗教的な意味合いで作られたものだが、そんなことはともかく、この曲を聴いているとワナワナと震えるような怒りの気持ちが、音楽につられて増幅していく。ぜひヘッドフォンをして大音量で聴いていただきたい。私などはあるとき、この楽曲と一緒に顔を両手で覆って「ああああもう!」と声を出したことがある。

しかし不思議なことに、楽曲の後半になると、怒っている自分を客観視できるようになる。トランペットがパカパーンと鳴り始めるころには、怒っているのがバカらしくなるような脱力を感じられる。都合5分で、とりあえずは人前に出ても大丈夫な程度の感情になれるので、まずは大変オススメである。

歌詞が面白い『おお、運命の女神よ』

5分程度では気持ちが切り替わらなかった場合、オルフ作曲の『カルミナ・ブラーナ おお、運命の女神よ』を聴いてほしい。こちらも映画やCMで多く使われている有名な楽曲である。

実に歌詞がいい。「運命の女神の後頭部はハゲである」という部分がある。比喩なのに直接的すぎる。そう、社長たるもの、チャンスを生かして後頭部ではなく前髪をつかまねばならない。

荒々しい楽曲ではあるが、最後には「前向きに頑張ろう」という気分になる。さらによいことに、このカルミナ・ブラーナは、24曲もの楽曲の集合である。『おお、運命の女神よ』だけで飽き足りなければ、次々と聴いてみるといい。

気が向いたら、歌詞の訳を調べてみるのも一興だ。カルミナ・ブラーナには、歌詞に問題のある楽曲が連座している。24曲の歌詞対訳を調べて読んでいくうち、きっとあなたも遠い日の小学生男子のような奔放な気持ちになれるに違いない。

感情を制御し、もう人前に出ても大丈夫、先ほどの私ではないのだ、というところまで回復できたら、最後の曲を聴いて悠然とドアを開こう。