非常識な対応で被告人の利益も損ねた光市母子殺害事件の弁護団

光市母子殺害事件という悲惨な殺人事件があった。被告人は1999年4月の犯行当時18歳と1カ月。被害者は女性とその子供である赤ちゃん。犯行態様は悪質極まりなかった。ところが18歳に達するまでは法的には少年で、少年法は18歳未満の少年には死刑の適用はしないとしている。少年法51条1項は18歳未満の少年は死刑であったとしても無期懲役にしなければならないと定めているんだ。だから18歳未満であれば必ず無期懲役になるのに、18歳を1カ月過ぎただけの本件被告人には死刑が適用されることになるのかということが大論争になっていた。

刑事事件としては1審、2審とも検察官の死刑求刑を退け、無期懲役の判決が下された。これに対して、被害者の夫であり父であるご遺族が厳罰を求める運動を起こしていた。ご遺族という辛い立場でありながら、亡き妻のため亡き子供のために必死になられていた。そのご様子はメディアでもたびたび報じられていて、僕もそれを拝見し、同じく妻子を持つ立場として強い憤りを感じていた。

1審、2審では被告人は犯罪事実は全て認めており、情状や年齢のところだけが争点だった。被告人がどれだけ反省の意を示し、更生可能性があるかどうか。18歳未満の少年は少年法によって必ず無期懲役になることとのバランス。

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最高裁では弁論期日が開かれることになった。2審の無期懲役という判決が維持されるだろうと思っていたのが、18歳と1カ月という年齢の被告人に死刑が適用される可能性が出てきたんだ。死刑となれば、死刑が適用された歴代の被告人の中で最年少の被告人となる。そこで被告人というよりも弁護士業界が大慌てしたんだ。弁護士業界の「被告人の人権を守れ!」という血が騒いだんだろうね。ここで弁護人の大幅な交代劇があり、結構な弁護団が結成された。当然この弁護団は被告人が死刑になることを回避するために徹底した弁護活動を行うことを目標にした。

その目標は正当なものだ。しかしその手段が、どう考えてもおかしいと僕は感じたんだ。まさに一般市民の感覚でね。

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