時間外労働時間の上限について、政府は「月平均60時間」の方向で調整に入りました。果たして、これは正しい判断なのでしょうか。雑誌「プレジデント ウーマン」では、毎号、働く女性を集めた「座談会」を企画しています。今回は、長時間労働の是非について金融機関、製薬会社などで働く女性3人に、安倍晋三首相に提言すべき内容を議論しました――。
望月幸美さん●金融機関勤務。3人の子どもを育てながら、会社の制度を組み合わせて営業など幅広い業務で活躍。
野村裕美子さん●製薬企業にて、14年間MRとして活躍。2人の子どもがまだ小さいので現在は時短をとっている。
稲木智子さん●金融情報サービス会社のQUICK勤務。会社は残業時間を減らし、「えるぼし」3つ星認定取得。
※日本女子経営大学院の協力で、現役受講生とOGのみなさんにお集まりいただきました。

時間外労働の上限「月平均60時間」は多いか少ないか

【野村】私は3歳の双子を子育て中のため、「ファミリーケアMR」という育児や介護に責任があるMRが短時間労働できる制度を活用し、9時半から17時まで働いています。

【望月】子どもが3人おり、10年間、短時間勤務で働いてきました。1番下の子が小学生になりましたので、現在はフレックスタイム制を活用してフルタイム勤務しています。

【稲木】当社では、2009年時点では月平均45時間だった時間外労働を、時間外削減運動「仕事ダイエット」やノー残業デイの導入などの取り組みで、32時間程度にまで減らしています。私個人としても、月の残業が50時間を超えると体力的にキツイなと感じます。

【望月】私もたまに残業をすることもあるのですが、子どもの夏休みのときなどは学童にお弁当をもたせるために朝4時起きなんです。帰宅が遅くなるともうクタクタです。でも、早く帰らなければならない人もいれば、もっと仕事をしていたいという人もいます。

【稲木】仕事を早く終わらせるには、意思決定の速さが大切だと思います。私は現在、アライアンスを組んでいる米系情報ベンダーで働いているのですが、みなさんメリハリをつけて仕事をしており、残業をせずに勤務時間中に仕事を終わらせることを意識しています。何か相談したときのレスポンスや決断もとても速いです。

【望月】仕事の発注元が、発注先に納期などで無理をさせないということも重要ですよね。残業規制や働き方改革は、業界全体や、大手企業・中小企業が一体で取り組んでいかなければならないのかなと思います。

【野村】私は時短制度を取得するまで、若い頃は残業や休日出勤をしていた時期もありました。外勤活動から帰社して、夜の時間帯を利用して上司や先輩方からアドバイスをもらったり、コミュニケーションを取ったりしていました。当時はそういった時間が自分の成長のためには貴重な時間でした。でも今は、製薬業界も含め多くの企業が働き方改革に取り組み、長時間労働も少なくなってきていると思います。今後はこれまでと同じ成果をより短時間で生み出し、かつ大切にしていたコミュニケーションに関しても十分行っていけるよう、時間の使い方を工夫する必要があると感じています。