※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年1月2日号)の特集「医者の診断のウラ側」の記事を再編集したものです。
自宅や会社のPC・スマホのテレビ電話で受診
2016年11月、首相官邸で開催された未来投資会議で安倍晋三首相はこう語った。
「医療では、データ分析によって個々人の状態に応じた予防や治療が可能になります。ビッグデータや人工知能を最大限活用し、『予防・健康管理』や『遠隔診療』を進め、質の高い医療を実現していきます」
首相の言及により、「遠隔診療」が今、注目を集めている。
そもそも遠隔診療とは、パソコンやタブレット、スマートフォンを利用し、通院せずにテレビ電話で受けられる診療のこと。患者としては、通院の負担が軽減する望ましい医療に見える。医師で、遠隔診療のシステムを提供するメドレーの豊田剛一郎代表はこう解説する。
「遠隔診療は、海外ではテレメディシン(tele-medicine)と呼ばれています。日本では『遠隔』と翻訳されてしまうので、どうしても離島や僻地、年齢などの理由で通院できない人向けとイメージされがちです。テレビ電話での診療は、患者さんの通院の負担を下げますから、糖尿病、高血圧、精神科などの慢性疾患の方の受診率や通院率の上昇、重症化の予防も期待できます。また、仕事で病院に通えない人も空いた時間にスマホで受診できますし、子育て中の家庭でも、小児科や婦人科にかかりやすくなる。世代年代を問わず、メリットは大きいんです」
長く遠隔診療は、医師法第20条の「患者との対面診療を原則とする」という趣旨に則り、医療関係者の間で「原則禁止」と考えられ、積極的には行われてこなかった。しかし、昨年8月に厚労省が各都道府県知事に示した通知で、遠隔診療は医師法に抵触せず必要以上に狭く解釈しなくてよい、という方針が示されたのだ。その通知は、医療の現場では遠隔診療の「事実上の解禁」として受け止められた。