「街づくり」の会社だからこそ、多様な価値観を受け入れる
大熊さんや初田さんのような事例から同社があらためて意識したのは、組織でさまざまな立場の社員が働きやすい環境をつくることが、結果的に事業の成果の拡大や社員同士のコミュニケーションの良質化につながるという確信だろう。
同社の「働き方改革」はまだ始まったばかりだともいえるが、人材戦略室長の村井淳さんは確かな手ごたえを感じていると語った。
「この約3年間を振り返って確信しているのは、人事とは戦略であるということ。以前の人事の施策には、画一的で不公平感のないことが求められた時代もありました。しかし、いまは経営戦略の中に人材が位置づけられ、外部に向けても会社の価値として発信する時代になった」
東急電鉄は鉄道事業を行うと同時に、「街づくり」を事業の中核に置く企業だ。都市に広がっていく多様な価値観に対応するためにも、さまざまな働き方をする人材を社内に増やすことは、今後の人材戦略室の大きなテーマだと村井さんは続けた。
「だからこそ、ワークスタイルの多様化を進め、その中からさまざまな意見や価値観が表現されていく風土をつくる。それは私たちの事業の未来にとって、最も重要なことだと考えています」
▼収益の柱は「生活サービス」事業
東急グループは、生活に密着した事業を幅広く展開しており、家庭や育児を含むさまざまな経験が、仕事に反映できる企業集団です。
女性の活躍の場は非常に大きいといえます。今、さまざまな場面で「際(きわ)」が無くなっています。
各企業が業種の違いを超えて新規市場に進出する中、従来のやり方を踏襲するだけでは、世の中の素早い変化に対応できません。
これからの経営の鍵は、各社員の能力を最大限に活かすことにあると考えます。
女性社員には、その生活者視点に加えて、誰にも負けない得意技を身に付け、自分も企業もさらに成長させるよう磨きをかけることを期待しています。
撮影=市来朋久