先輩のノウハウを若い世代に伝える「達セミ」

三宅義和・イーオン社長

【三宅】高校の生徒から受ける英語の勉強の悩みとか、相談というのは、どういった内容が多いでしょうか。

【谷口】一番多いのは「文法がわからない」というものですね。でも、よく聞いてみると、文法というレベルの話ではなく、実は単語の用法なんです。例えば、「AにBを思い出させる」という意味の「remind A of B」という表現があると、「of」の使い方がわからないといったことです。

それと「赤点は何点ですか」というストレートな質問も多いです(笑)。私は、生徒たちに努力してほしいので「半分の50点」と言ってみたり、センター試験を意識し「センターでは最低7割とってほしいので70点だね」と言ったりすることもありますね。

【三宅】そうしたご苦労のなかで、先生がた同士で英語の指導法やノウハウをシェアするといったようなことはあるのでしょうか。

【谷口】先ほどのシートもそうですが、自分でつくった自主教材を、ほかの先生に配ったりすることはあります。

【三宅】1995年に谷口先生が主宰されて、英語教員の自主研究会としてスタートした「達人セミナー」についてお伺いします。これは学校での仕事以外の時間を使って、行われています。すばらしい試みだと思うのですけれども、こうした会を開こうとした先生の決意と言いますか、思いはどのようなものでしたか。

【谷口】第1回が95年6月4日でした。会場は当時の勤務校だった筑波大学附属駒場中・高等学校の多目的ホール。200人ぐらい入る大きな教室です。そこに全国から70人ぐらいの参加者が集まってくださいました。会費が無料だったからかもしれません。北は秋田から、南は熊本まで。筑駒は中高一貫校でしたから、中学校の教諭が5分の3、高校の先生が5分の1、あとは出版社や塾、予備校といった教育業界関係者と大学生、院生たちでした。

もともと「達セミ」というのは、墨田区立両国中学校にお勤めだった長勝彦先生の退職の花道をつくろうということで、長先生の59歳、60歳の最後の2年間、6月、9月、翌3月の第1土曜日、つまり各学期に1回ずつ、計6回のセミナーを開くことにしました。その中で、長先生の40年近い経験とか、教え方、考え方などを若い世代に伝えていく狙いもあったわけです。

【三宅】そうですか。

【谷口】最初、午前中は3つの分科会でした。1つは、中学校教員の実践発表。2つ目は高校教員の実践報告。3つ目として、いまから20年以上前に私がかかわっていたNHKの『基礎英語2』というラジオ番組のプロモーションを兼ねた「基礎英語2を作る側、使う側」というものでした。そして午後には、長先生の6回連続講義を設定しました。