だれも「居酒屋」では働きたくない
このように外食企業のM&Aが活発化している背景はなんだろうか。
ひとつは慢性的な人手不足だろう。リスクモンスター社が2017年3月に発表した、「第3回 就職したい企業・業種ランキング調査」 によると、「小売・外食」は就職したい業種ランキングで最下位となっている。
人手不足は、飲食業界における大きな課題となっている。人がいなければ、新店舗を出すこともできない。人手不足は企業成長のボトルネックになってしまう。だが、すでに人材のいる企業をM&Aできれば、人も店舗も同時に手に入る。企業の成長を考えた場合、M&Aは当然の戦略であると考えられる。
また、飲食業界は「規模の経済」が働きやすい業界でもある。ある一定の地域に集中出店している店舗を一気にM&Aしたほうが、1店舗ずつその地域に出店していくよりも、あらゆる面で効率的である。自社が出店していない空白地域や弱い地域などの企業をM&Aすることは、競争戦略として非常に有効だろう。
加えて、吉野家やグルメ杵屋のように、新業態開発やブランド補完のために、M&Aを活用していくことも今後増加していくと考えられる。